監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は健康保険法および日本年金機構の公表情報(請求の案内)に基づき作成しています。
この記事の結論
傷病手当金は支給開始日から通算1年6か月(健康保険法第99条第4項)、障害年金の障害認定日は初診日から1年6か月で、多くの場合は認定日のほうが先に来ます。
認定日に合わせて障害年金を請求する準備を進めれば、傷病手当金が終わったあとの空白を小さくできます。
同じ病気で障害厚生年金を受けられる期間は傷病手当金が調整されるため(同法第108条第3項)、重なった分の返還に注意が必要です。
「もうすぐ傷病手当金が終わる。退職したら収入がゼロになってしまう」。休職中の方から、こうしたご相談をよくいただきます。
傷病手当金と障害年金は、どちらも「1年6か月」という区切りを持っています。ただ、数え始める日が違います。この違いを知っておくと、収入が途切れる期間をつくらずに済む可能性が高まります。この記事では、健康保険法と日本年金機構の案内をもとに、その動き方を整理します。
傷病手当金は、いつ終わりますか?
傷病手当金の支給期間は、支給を始めた日から通算して1年6か月です。
支給が始まるのは休んで4日目から
健康保険法第99条は、働けなくなった日から3日を過ぎた日から傷病手当金を支給し、支給期間は支給を始めた日から通算して1年6か月としています。途中で復職して支給が止まった期間は数えないため、終わる日は人によって違います。正確な終了日は、加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に確認してください。
退職後も受け取れる条件
健康保険法第104条により、退職日まで引き続き1年以上被保険者で、退職した時点で傷病手当金を受けている方は、退職後も残りの期間を受け取れます。ただし、1年6か月の上限が延びるわけではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給の始まり | 働けなくなった日から3日を過ぎた日 |
| 支給期間 | 支給を始めた日から通算1年6か月 |
| 退職後の継続 | 退職日まで1年以上加入し、退職時に受給中であること |
なぜ「空白期間」が生まれるのですか?
傷病手当金が終わる時点で障害年金の請求が進んでいないと、年金が決まるまでの間、収入が途切れるからです。

2つの「1年6か月」は起点が違う
障害認定日は「初診日」から1年6か月、傷病手当金は「支給を始めた日」から通算1年6か月です。初めて受診してから休み始めるまでに間があるほど、認定日は傷病手当金の終わりより先に来ます。たとえば次のような流れです。
| 出来事 | 時期の例(連続して休んだ場合) |
|---|---|
| 初診日 | 令和7年4月1日 |
| 休職し、傷病手当金の支給開始 | 令和7年7月ごろ |
| 障害認定日(初診日から1年6か月) | 令和8年10月1日 |
| 傷病手当金の支給終了(通算1年6か月) | 令和9年1月ごろ |
終わってから動くと間に合わない
障害年金は、診断書などの書類をそろえて請求し、審査を経て決まります。傷病手当金が終わってから準備を始めると、その間は収入がありません。さらに認定日に等級に当たらず事後重症として請求する場合は、請求した月の翌月分からの支給になり、さかのぼれません。
体調が落ち着いてから、ゆっくり手続きしようと思っていました。
社労士そのお気持ちはよくわかります。ただ、病院の書類は受け取りまで時間がかかります。依頼だけでも先に済ませておくと、体調に合わせて進められますよ。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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空白をつくらないには、いつ準備を始めればよいですか?
傷病手当金の終了日ではなく、障害認定日を目標に、その数か月前から準備を始めます。
2つの日付を先に確かめる
まず、初診日から数えた障害認定日と、健康保険に確認した傷病手当金の終了日を書き出します。日本年金機構も、傷病手当金を受けている方に向けて、認定日に等級に当たる場合の請求を案内し、請求が遅くなると受け取れる年金の総額が減ることがあると注意を促しています。
病院に頼む書類から先に
認定日で請求する診断書は、障害認定日より3か月以内の症状を書いたものが必要です。初診の病院が今の病院と違えば、受診状況等証明書も要ります。どちらも医療機関に頼む書類で時間がかかるため、認定日が近づいたら主治医に「障害年金の請求を考えている」と伝えておきます。
傷病手当金と障害年金が重なったら、どうなりますか?
同じ病気で障害厚生年金を受けられる期間は、傷病手当金は支給されず、年金のほうが少ないときに差額だけが支給されます。

調整の対象は障害厚生年金
健康保険法第108条第3項が調整の対象としているのは、障害厚生年金です。障害基礎年金だけを受ける場合は、この調整の対象になりません。認定日にさかのぼって障害厚生年金が決まると、すでに受け取った傷病手当金のうち重なった分の返還を求められることがあります。
返還を見込んで計画する
返還があっても、障害厚生年金の受給権が早く決まることで、傷病手当金が終わったあとの収入の見通しが立ちます。重なった期間の扱いと、どちらを先に受け取るかの考え方は、傷病手当金と障害年金の支給調整の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 退職すると、障害厚生年金は受けられなくなりますか?
A. 受けられなくなりません。障害厚生年金は、初診日に厚生年金に加入していたかどうかで決まります。初診日が在職中であれば、退職したあとに請求しても障害厚生年金の対象になり、3級まで受け取れる可能性があります。
Q. 傷病手当金の終了日は、どこで確認できますか?
A. 加入している健康保険(協会けんぽの支部や健康保険組合)に問い合わせると確認できます。途中で復職した期間は数えない「通算」の仕組みのため、自分で計算するより、保険者に確かめるほうが確実です。障害認定日とあわせて書き出しておくと安心です。
Q. 障害基礎年金だけの場合も、傷病手当金は減りますか?
A. 減りません。健康保険法第108条第3項の調整の対象は障害厚生年金で、障害基礎年金だけの場合は対象外です。傷病手当金と障害基礎年金は、両方を受け取れます。年金の種類は初診日に加入していた制度で決まります。
Q. 認定日には軽かった場合は、どうなりますか?
A. その後に悪化した時点で、事後重症として請求できます。支給は請求した月の翌月分からで、さかのぼりはありません。日本年金機構の案内のとおり65歳以降は請求できないため、悪化したと感じたら早めに準備してください。
まとめ:目標は傷病手当金の終わりではなく、障害認定日
傷病手当金は支給開始から通算1年6か月、障害認定日は初診日から1年6か月で、多くの場合は認定日のほうが先に来ます。傷病手当金の終わりを待たず、認定日を目標に病院の書類から準備を始めれば、収入が途切れる期間を小さくできます。障害厚生年金と重なる期間の調整と返還も、あらかじめ見込んでおきましょう。
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参考資料
・健康保険法 第99条・第104条・第108条(e-Gov法令検索)
・用語集「障害認定日」(日本年金機構)
・障害厚生年金を受けられるとき(日本年金機構)
・傷病手当金を受給されている皆様・病気やけがで療養中の皆様へ 障害年金のご案内(日本年金機構)
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