病気やケガで会社を休職した際、まず頼りになるのが健康保険から支給される「傷病手当金」です。
しかし、休職が長引き、症状が固定してくると、次のステップとして「障害年金」の申請を検討することになります。
このとき、多くの受給者が直面するのが「この2つのお金は同時にもらえるのか?」という疑問です。
「両方もらえれば生活が楽になる」と期待される方もいらっしゃいますが、日本の公的制度には「併給調整(へいきゅうちょうせい)」というルールがあり、満額を二重取りすることは原則としてできません。
この記事では、傷病手当金と障害年金の関係、支給額が調整される仕組み、そして申請のタイミングによって生じる「返金リスク」について、わかりやすく解説します。
結論:同時に受け取ることはできますが「調整」されます
まず結論からお伝えすると、受給する権利自体は同時に持つことができますが、実際に振り込まれる金額は調整(減額)されます。
両方の制度から満額が支給されるわけではない、という点をまずは理解しておきましょう。
障害年金が優先され、傷病手当金が減額される
この2つの制度が重なった場合、法律上「障害年金」が優先されます。
その結果、本来もらえるはずだった傷病手当金の額から、障害年金の額(日割り計算した額)が差し引かれて支給されます。
つまり、傷病手当金の一部、または全額がストップすることになります。
「合計額」が減るわけではない
「調整される=損をする」と感じるかもしれませんが、そうではありません。
調整のルールは「傷病手当金の日額 > 障害年金の日額」である場合、その差額分は傷病手当金として支給されるというものです。
つまり、2つの制度を合わせたトータルの受取額は、少なくとも「金額が高い方の制度(多くは傷病手当金)」と同じ水準は確保されます。
収入が極端に減るわけではないので安心してください。
要注意!「過去にさかのぼって」受給する場合のリスク

これから申請する方が最も注意しなければならないのが、障害年金を過去にさかのぼって請求(遡及請求)し、それが認められたケースです。
ここで「調整」のルールが適用されると、思わぬトラブルになることがあります。
過去分の傷病手当金を「返金」しなければならない
もし、障害年金が過去の日付(障害認定日など)にさかのぼって決定し、数百万円の年金が一括で振り込まれたとします。
しかし、その期間中にすでに傷病手当金を受け取っていた場合、その重複期間については「障害年金が優先」というルールが後から適用されます。
結果として、すでに使い切ってしまった生活費としての傷病手当金を、保険者(協会けんぽ等)に「返還」しなければならなくなるのです。
年金の入金と返還請求のタイムラグ
怖いのは、年金が振り込まれるタイミングと、傷病手当金の返還請求が来るタイミングが必ずしも同時ではないことです。
先に振り込まれた年金を「臨時収入だ」と思って使ってしまうと、後から届いた返還請求書を見て「払えない」という事態に陥ってしまいます。
さかのぼって申請をする場合は、必ず「返金分」を取り分けておく必要があります。
損をしないための申請タイミングと切り替え方

傷病手当金は支給開始から最大で1年6ヶ月間受給できます。
一方、障害年金も初診日から1年6ヶ月経過(または症状固定)しなければ請求できません。
この期間の兼ね合いをどう考えるかがポイントです。
傷病手当金の終了に合わせて申請する
最もスムーズでリスクが少ないのは、傷病手当金の受給期間(1年6ヶ月)が終わるタイミングに合わせて、障害年金への切り替えを行うパターンです。
これなら受給期間の重複が起きない(または少ない)ため、複雑な調整や返金の心配をせずに、シームレスに生活費を確保できます。
ただし、障害年金は審査に数ヶ月かかるため、手当金が終わる半年ほど前から準備を始めるのが理想的です。
障害年金の方が金額が高いケース
例外的に、配偶者やお子さんがいて「加給年金」などがつく場合、傷病手当金よりも障害年金の日額の方が高くなることがあります。
この場合は、重複期間があっても障害年金へ切り替えた方が、トータルの受取額が増えることになります。
ご自身の給与水準と年金見込額を比較し、どちらが有利かをシミュレーションしておくことが大切です。
複雑なお金の悩み、一人で抱え込まないために
制度の調整や返金の話は、計算が複雑で不安になるものです。
最後に、受給漏れや返金トラブルを防ぐために、次にあなたがすべきことを整理しました。

①まずは「金額の比較」をしてみる
現在受け取っている(または予定の)傷病手当金の日額と、障害年金を受給できた場合の年額(日割り)をざっくりと比較してみましょう。
「どちらの金額が大きいか」を知るだけで、急いで申請すべきか、傷病手当金の満了を待つべきかの判断基準になります。
②「返金リスク」があるか確認する
もし、初診日から1年6ヶ月以上経過しており、これから「さかのぼって」障害年金を申請しようと考えているなら、返金リスクは確実に発生します。
「年金が入ったら、その一部は右から左へ返さなければならないお金だ」と認識し、資金計画を立てておく冷静さが必要です。
③判断に迷ったら「専門家」に試算を依頼する
「自分の場合はいくら返金になるのか?」「いつ申請するのがベストなのか?」といった個別の計算は、専門知識がないと非常に困難です。
私たちは、あなたの受給状況に合わせた最適な申請スケジュールをご提案できます。
せっかくの年金で後から困らないために、申請前に一度、無料相談にて今後の見通しを確認してください。
