監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・医師法・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
障害年金の申請が遅れると、5年より前の分は時効で受け取れなくなります(国民年金法第102条第1項)。
障害認定日による請求そのものは何年たってもできるので、あきらめずに、カルテが残っているうちに早めに準備を始めてください。
ただし事後重症請求は請求した月の翌月分からの支給で、65歳に達する日の前日までという期限もあり、待った月の分は取り戻せません。
「体調が落ち着いてから」「仕事が一段落してから」と、障害年金の申請を後回しにしている方は少なくありません。障害年金は自分で請求しない限り支給されず、年金事務所から案内が届くこともありません。
この記事では、申請が遅れたときに失うもの(時効で消える年金・事後重症請求で待った月の年金・証明に必要な記録)と、失わないもの(請求する権利)を、法令の条文をもとに整理します。
障害年金の申請が遅れると、受け取れなくなる年金はありますか?
あります。障害年金は、5年を過ぎた分から順に時効で受け取れなくなります。
国民年金法第102条第1項は、支払期月ごとに受け取る年金(支分権)について、支払期月の翌月の初日から5年で時効により消滅すると定めています。障害厚生年金も、厚生年金保険法に同じ定めがあります。
さかのぼれるのは、請求した時点から5年分までです
たとえば、障害認定日(初診日から1年6か月を経過した日)に2級の状態だった方が、その8年後に請求したとします。認定されても受け取れるのは直近5年分で、それより前の3年分は支払われません。申請が1か月遅れるごとに、5年より前の1か月分が消えていく仕組みです。
5年分の計算は、請求書を提出した日が基準です
年金事務所に相談した日や、医師に診断書を頼んだ日は基準になりません。障害認定日の時点で障害の状態にあった可能性がある方は、請求書の提出まで早めに進めることが、受け取れる額を守るいちばんの対策です。
申請が遅れても、障害年金を請求する権利はなくなりませんか?
なくなりません。障害認定日による請求は、障害認定日以降であればいつでも提出できます。

日本年金機構も、障害認定日による請求は「いつでも提出できる」とし、さかのぼって受け取れる額は時効により5年分が上限と案内しています。年金を受ける権利そのもの(基本権)にも5年の時効の定めがありますが、やむを得ない事情で請求できなかった場合は、理由を申し立てることで時効消滅させない取扱いがされています。
請求方法によって、遅れたときの影響が違います
| 障害認定日による請求 | 事後重症による請求 | |
|---|---|---|
| 対象になる方 | 障害認定日に障害等級に該当していた | 障害認定日には該当せず、その後悪化した |
| 支給の始まり | 障害認定日の翌月分から | 請求した月の翌月分から(国民年金法第18条第1項) |
| 請求の期限 | なし(さかのぼりは5年分まで) | 65歳に達する日の前日まで(国民年金法第30条の2第1項) |
| 遅れたときの影響 | 5年より前の分が時効で消える | 待った月の分はまったく受け取れない |
事後重症請求は、1か月の遅れがそのまま損失になります
事後重症請求(障害認定日より後に障害が重くなって請求する方法)は、過去にさかのぼりません。「65歳に達する日」は誕生日の前日なので、期限は実際には65歳の誕生日の前々日です。
事後重症だと、申請を迷っている間の分はもらえないんですか?
社労士はい、請求した月の翌月分からの支給なので、待った月の分は戻りません。迷っている間に失う金額のほうが大きくなりやすいので、まずはご状況を一緒に整理しましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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申請が遅れると、初診日や当時の状態を証明しにくくなりますか?
なります。カルテの法定保存期間は5年なので、時間がたつほど証明に必要な記録が失われやすくなります。
医師法第24条第2項は、診療録(カルテ)の保存期間を5年間と定めています。5年を過ぎたカルテは廃棄されることがあり、閉院や医師の引退で記録をたどれなくなることもあります。
申請に使う書類は、どれもカルテが元になります
- 受診状況等証明書:初診日(その病気で初めて医師の診察を受けた日)を証明する書類
- 障害認定日の診断書:障害認定日以後3か月以内の状態を書いてもらう書類
- 現在の診断書:請求日前3か月以内の状態を書いてもらう書類
まず、記録が残っているかを確認しましょう
初診の病院と、障害認定日ごろに通っていた病院に、カルテが残っているかを電話で確かめるだけでも、次に何を準備すればよいかが見えてきます。カルテがすでにない場合の方法は「初診日の証明が取れない!病院の廃院やカルテ破棄への対処法」で解説しています。
「症状が落ち着いてから」「働いているから」と申請を待つのは得策ですか?
得策ではありません。障害年金は障害認定日と請求日前3か月以内の状態で審査されるので、待つことで有利になる仕組みはありません。

申請を先延ばしにしても、受け取れる年金が増えることはありません。減るのは、時効で消える年金と、事後重症請求で待った月の年金です。
落ち着いた時期を待つと、その時期の状態で判断されます
事後重症請求の診断書は、請求日前3か月以内の状態(現症)を書くものです。たまたま症状が軽い時期を選んで請求すると、その時期の状態が審査の中心になります。症状に波がある方ほど、波があること自体を診断書と申立書で伝えることが大切です。
働いていても、請求はできます
国民年金法・厚生年金保険法に、就労していると請求できないという規定はありません。精神の障害では、厚生労働省の等級判定ガイドラインが、仕事の内容や職場で受けている援助などを考慮して判断するとしています。迷っている時間は、初診日とカルテの有無の確認に充ててください。
よくある質問
Q. 診断書は、作成日から3か月以内に提出しないといけませんか?
A. いいえ、基準は作成日ではなく現症日(診断書に書かれた状態の日付)です。事後重症請求は請求日前3か月以内、障害認定日による請求は認定日以後3か月以内の現症が必要です(国民年金法施行規則第31条第2項第4号)。
Q. 65歳を過ぎると、障害年金は請求できませんか?
A. 障害認定日による請求なら、65歳を過ぎてからでも請求できます。65歳に達する日の前日までという期限があるのは、事後重症請求です。ただし、さかのぼって受け取れるのは5年分までで、認定日当時の診断書が用意できるかが鍵になります。
Q. さかのぼって認められた分は、どのように支払われますか?
A. 時効にかからない過去の分は、支給決定後の初回の支払いでまとめて振り込まれます。その後は、偶数月に前の2か月分ずつ支払われます。障害年金は非課税なので、まとめて受け取っても所得税・住民税はかかりません。
Q. 障害認定日ごろに受診していないと、さかのぼれませんか?
A. 認定日以後3か月以内の受診記録がないと、その時期の診断書が作れないため、原則として認定日による請求はできません。その場合も、今の状態で事後重症請求をすることはできます。通院が途切れていた方は、事後重症請求を前提に準備を進めましょう。
まとめ:申請の遅れで失うものと、失わないもの
申請が遅れて失うのは、5年より前の年金、事後重症請求で待った月の年金、そして証明に必要な記録です。一方で、請求する権利そのものは、遅れたからといってなくなりません。
「もう遅いかもしれない」と感じたときこそ、初診日とカルテの有無の確認から始めてください。障害認定日までさかのぼれるかどうかは、記録を見ないと判断できない部分もあります。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
この記事に関連する受給事例
透析を続けていたのに制度を知らず受給が遅れたケース|5年遡及で障害年金2級を受給|愛媛県
参考資料
・国民年金法 第18条・第30条の2・第102条(e-Gov法令検索)
・医師法 第24条(e-Gov法令検索)
・年金の時効(日本年金機構)
・障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
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