「これ以上の回復は見込めません。今日でリハビリは終了、症状固定ですね」
主治医からそう告げられたとき、多くの相談者様は「ようやく障害年金の申請ができる!」と考えます。
しかし、障害年金の実務において、この「症状固定」という言葉をそのまま鵜呑みにするのは非常に危険です。
医師が言う「症状固定(医学的判断)」と、年金機構が求める「障害認定日(法的判断)」は、一致することもあれば、大きくズレることもあるからです。
特に肢体の障害においては、タイミングの判断一つで受給額が数百万単位で変わることも珍しくありません。
今回は、肢体の障害における「診断書を依頼すべき本当のタイミング」について、実務の裏側まで踏み込んで解説します。
障害年金の基本ルール「1年6ヶ月待機」の壁
障害年金の申請には「障害認定日」という高い壁があります。原則として、初診日から1年6ヶ月が経過した日以後でなければ、どんなに症状が重くても申請は認められません。
なぜ「待ち時間」が必要なのか
障害年金は「一過性の病気」ではなく「永続する障害」をサポートする制度です。
そのため、治療を続けてもなお障害が残ることを確認する期間として、1年6ヶ月という月日が設定されています。
原則ルールが適用されるケース
例えば、うつ病などの精神疾患や、特定の処置(手術等)を行わずに経過観察を続ける内科疾患などの場合、たとえ数ヶ月で「一生この状態です」と医師に告げられたとしても、基本的にはカレンダーをめくり続け、1年6ヶ月という月日が流れるのを待たなければならないのです。
1年6ヶ月を待たずに申請できる「認定日の特例」

しかし、肢体の障害には、この長い待機時間を大幅に短縮(ショートカット)できる特例が数多く認められています。
この特例を知っているかどうかが、受給開始時期を1年以上早められるかどうかの分かれ道となります。
肢体の切断・離断
手首から先、足首から先などを失った場合、「切断または離断した日」が認定日となります。
義足の装着を待つ必要はありません。
人工関節・人工骨頭の挿入置換
変形性股関節症や大腿骨頭壊死などで人工関節・人工骨頭を挿入した場合、「挿入置換した日」が認定日です。
手術をしたその日から、2級(または3級)の受給権が発生する可能性があります。
脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)による麻痺
肢体の障害で最も相談が多いケースです。
初診日から6ヶ月経過以降に、医学的観点からそれ以上の回復が見込めないと認められる日(症状固定日)が認定日となります。
その他の重要な特例(内部障害等)
人工透析: 透析開始から3ヶ月を経過した日
喉頭全摘出: 手術を行った日
ペースメーカー・ICD・人工弁の装着: 装着した日
なぜ「症状固定=即診断書」で失敗することがあるのか

人工関節の挿入や肢体の切断など、特例に該当する場合は「症状固定=即診断書」で間違いありません。
しかし、ここで専門家のサポートが必要な理由は、「医師が診ている姿」と「自宅での実態」の乖離(かいり)を埋めないまま依頼してしまうリスクがあるからです。
診察室での姿と、自宅での姿の「乖離」
肢体の診断書には、「片足で立てるか」「階段を昇り降りできるか」といった8つの動作について、4段階で評価する欄があります。
リハビリ病院の医師は、患者さんの「できるようになったこと」に注目する傾向があります。
リハビリ室という整った環境で、平行棒や手すりを使って「頑張ればできる姿」を基準に診断書が書かれてしまうと、日常生活での本当の困難さが反映されず、実態より軽い等級に判断されてしまうリスクがあるのです。
固定した瞬間の「真の実態」を医師に伝える
「症状固定」は申請の合図ですが、それは同時に「その時点の状態が一生の評価として固定される」ことも意味します。
一度書かれた診断書を後から修正してもらうのは非常に困難です。
だからこそ、診断書を依頼するその瞬間に、自宅での伝い歩きの実態や、転倒の危険性、身の回りの動作にかかる時間など、「診察室では見えない固定した状態」を、客観的な資料として医師に提示する必要があります。
診断書依頼時に社労士が医師へ届ける「3つの武器」
医師は診断のプロですが、障害年金の審査基準のプロではありません。
当センターでは、診断書を依頼する際、以下の内容をまとめた「参考資料」を医師に添えていただきます。
1. 補助器具の使用実態
杖、歩行器、車椅子がなければ移動できない、あるいは家の中では壁をつたわなければならないといった、具体的な補助の必要性を伝えます。
2. 転倒のリスクと動作の「質」
単に「立てる」だけでなく、すぐにふらつく、あるいは激しい痛みを伴うといった、動作の「質」と安全性の欠如を言語化します。
3. 就労・社会生活への制限
デスクワークであっても、通勤時の段差や長時間の座位保持がどれほど困難か。
社会生活を送る上での真のバリアを医師に届けます。
肢体の障害における「遡及請求(さかのぼり)」の可能性

もし、数年前に「症状固定」と言われていたのに、今まで申請していなかった場合はどうなるでしょうか。
最大5年分の一括受給を目指す
「障害認定日(特例を含む)」時点の診断書と、「現在」の診断書の2枚を揃えることで、最大5年分の年金を一括で受け取れる「遡及請求」が可能です。
特に人工関節置換術を受けた方は、手術日が明確であるため、数年前の手術であっても大きな受給チャンスが眠っています。
香川・中四国エリアの皆さまへ:適切な「攻め時」を逃さないために
観音寺市をはじめ、香川・中四国エリアでリハビリに励まれている方、あるいは手術を終えられた方。
医師からの「症状固定」は、ゴールではなく「障害年金申請のスタート地点」です。
私たちは、単に書類を代行するだけでなく、複雑な特例の中から「最短でいつ受給権が発生するのか」を正確に特定し、その認定日当日に即、実態を100%反映した診断書を揃えられるよう全力を尽くします。
肢体の障害は基準が数値化されている分、わずかな遅れや記載の不備が、将来受け取る年金額に直結するシビアな分野です。
一日でも早く、かつ確実な権利を守るために、まずはそのパズルのピースを私たちに見せてください。
💡 あわせて読みたい関連記事
障害年金の等級はどう決まる?1級・2級・3級の違いをわかりやすく解説
肢体の障害における「著しい制限」の定義とは何か。
等級を分ける具体的な動作の基準を、実務的な視点で深掘りしています。
2つ以上の障害を合わせる「併合認定」の仕組み。前後の障害を統合して上位等級を目指せる条件
肢体以外にも持病がある場合、それらを合わせることでさらに上位等級を目指せる「併合認定」。
その根拠と計算ルールについて解説した、受給額アップに欠かせない知識です。
まとめ:その「症状固定」は、本当に今がベストか?
「症状固定」という言葉をきっかけに動き出すのは正解です。
しかし、その瞬間にハンコを押す前に、もう一度だけ「日常生活の実態」と「認定日の特例」を照らし合わせてみてください。
あなたのリハビリの努力が、不適切な診断書によって「軽い障害」として扱われないために。最善のタイミングを見極める目を持つ専門家を、ぜひ味方につけてください。



