監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・障害認定基準に基づき作成しています。
この記事の結論
発達障害にうつ病などの二次障害が加わっていても、要件を満たせば障害年金は受けられ、両方の症状を合わせて総合的に審査されます(障害認定基準 第8節)。
診断書には、うつの症状だけでなく、その背景にある発達障害の特性が生活にどう影響しているかまで書いてもらいましょう。
同一の病気と扱われると、初診日が子どもの頃の受診日までさかのぼることがあります。
「発達障害の特性による生きづらさに加えて、うつの症状がつらくて働けない」。発達障害のある方は、周囲との摩擦や環境になじめないことから、うつ病や適応障害などの二次障害を抱えることが少なくありません。相談の現場では、二次障害の症状の方が重いケースも多くあります。
この記事では、二次障害があるときに障害年金がどう審査されるのか、初診日はどちらになるのか、診断書で気をつけることを、社労士の視点でお伝えします。
発達障害の二次障害があっても、障害年金は受けられますか?
受けられます。発達障害にうつ病などの二次障害が加わっている場合でも、初診日・保険料の納付・障害の程度の要件を満たせば、障害年金の対象になります。

二次障害とは
二次障害とは、発達障害の特性があることで生じる、人間関係や仕事のストレスが原因となって現れる精神の症状です。代表的なものに、うつ病・適応障害・不安障害などがあります。本人の努力不足ではなく、特性と環境の組み合わせで起こるものです。
精神の障害として、主に2級・3級で審査される
発達障害も二次障害も、障害年金では「精神の障害」として審査されます。等級は主に2級か3級(3級は障害厚生年金のみ)で、日常生活や仕事にどの程度の制限があるかで判断されます。
発達障害とうつ病の両方があると、どう審査されますか?
障害認定基準では、発達障害と他の精神疾患が併存している場合、等級を足し合わせる併合(加重)認定は行わず、諸症状を総合的に判断して認定すると定めています。
| 考え方 | |
|---|---|
| 等級のつけ方 | 発達障害とうつ病を別々に評価して足すのではなく、症状全体で1つの等級を判断する |
| 病気どうしの関係 | 実務上は、発達障害が原因でうつ病になったと考え、同一の病気として扱われることが多い |
| 初診日 | 同一の病気なら、どちらかで最初に受診した日が初診日になる |
| 根拠 | 障害認定基準 第8節「精神の障害」 |
症状全体で1つの等級が決まる
「発達障害で3級、うつ病で3級だから合わせて2級」という考え方はしません。発達障害の特性とうつの症状が、あわせて日常生活にどれだけ影響しているかが見られます。どちらか一方の症状だけを伝えると、全体の重さが伝わりにくくなります。
実務では「同一の病気」として扱われることが多い
前の病気がなければ後の病気は起こらなかった、という関係を「相当因果関係」といいます。発達障害とその後のうつ病は、実務上この関係があるとされ、同一の病気として扱われるケースが多くなっています。
今つらいのはうつの症状なので、発達障害のことは言わなくてもいいでしょうか?
社労士両方の症状を合わせて審査されるので、発達障害の特性も大切な情報です。初診日にも関わるため、子どもの頃の受診歴も含めて一緒に整理しましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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二次障害がある場合、初診日はどちらの受診日になりますか?
同一の病気と扱われる場合は、発達障害とうつ病のどちらで受診したかにかかわらず、最初に医療機関を受診した日が初診日になります。

大人になって初めて受診した場合
障害認定基準は、知的障害を伴わない人が発達障害の症状で初めて受診した日が20歳以降であれば、その受診日を初診日とすると定めています。うつ病で先に受診し、あとから発達障害と診断された場合も、うつ病で最初に受診した日が初診日になるのが一般的です。
子どもの頃の受診歴があると、厚生年金で請求できないことも
子どもの頃に発達障害で受診していた場合、大人になって会社員のときにうつ病を発症しても、初診日は子どもの頃の受診日になります。この場合は障害厚生年金ではなく、20歳前傷病の障害基礎年金(国民年金法第30条の4)として請求することになり、3級はありません。
二次障害で申請するとき、診断書では何に気をつければいいですか?
うつの症状だけでなく、その背景にある発達障害の特性が日常生活にどう影響しているかを、診断書に書いてもらうことが大切です。
特性と二次障害のつながりを伝える
「気分が落ち込む」だけでなく、「相手の意図を読み取れず職場で孤立し、それがきっかけで眠れなくなった」のように、特性とうつの症状のつながりを具体的に医師に伝えましょう。主治医が発達障害の専門でない場合は、特に意識して伝えることが大切です。
当センターの受給事例
香川県の22歳の女性で、ADHDとASDの特性から抑うつが悪化したケースでは、ご家族の支えがなければ難しい食事や身の回りのことの様子を、診断書と申立書に具体的に反映しました。その結果、障害基礎年金2級の受給が決まっています。この事例の詳細はこちら
よくある質問
Q. 発達障害の診断を受けていなくても、うつ病で申請できますか?
A. 申請できます。うつ病だけで診断されている場合も、症状が障害の程度に当てはまれば対象です。









