監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・日本年金機構の公表情報・厚生労働省の通知に基づき作成しています。
この記事の結論
障害年金は、障害者手帳を持っていなくても請求できます。日本年金機構が「すべての方が必要な書類」として挙げる書類に、障害者手帳は入っていません。
等級は国民年金法施行令などで定める障害年金独自の基準で判定され、手帳の等級とは連動しません。
ただし、身体障害者手帳や療育手帳を持っている方は、状況によって障害状態を確認する補足資料として提出を求められます。
「障害者手帳を持っていないと、障害年金はもらえないんですよね?」。ご相談のなかで、よくいただく質問です。
障害者手帳と障害年金は名前が似ていますが、根拠となる法律も窓口も判定の基準も異なる、別々の制度です。この記事では、日本年金機構の案内と厚生労働省の通知をもとに、手帳と障害年金の関係を整理します。
障害年金の申請に、障害者手帳は必要ですか?
必要ありません。障害者手帳を持っていなくても、障害年金は請求できます。

「すべての方が必要な書類」に手帳はない
| 書類 | 確認されること |
|---|---|
| 戸籍謄本・住民票など | 本人の生年月日(マイナンバーの記入で省略できる場合あり) |
| 医師の診断書 | 障害の状態 |
| 受診状況等証明書 | 初診日(初診時と診断書作成時の医療機関が異なる場合) |
| 病歴・就労状況等申立書 | 障害状態の補足 |
| 受取先金融機関の通帳等 | 年金の振込先 |
持っている方は提出を求められることも
日本年金機構の障害基礎年金の案内では、「ご本人の状況によって必要な書類」の中に「身体障害者手帳・療育手帳」があり、「障害状態を確認するための補足資料」とされています。手帳がないことが不利になるわけではなく、持っている方は障害状態を伝える材料の1つになる、という位置づけです。
障害者手帳と障害年金は、何が違いますか?
目的、申請の窓口、等級の決め方、受け取るための要件がすべて異なる、別々の制度です。
2つの制度の比較
| 障害者手帳 | 障害年金 | |
|---|---|---|
| 目的 | 福祉サービスや各種の割引・減免を受ける | 生活を支える年金(現金)を受け取る |
| 種類・等級 | 身体(1〜6級)、精神(1〜3級)、療育(区分は自治体ごと) | 障害基礎年金1・2級、障害厚生年金1〜3級 |
| 申請の窓口 | 市区町村の障害福祉の担当窓口 | 障害基礎年金は原則として市区町村役場、障害厚生年金は年金事務所・街角の年金相談センター |
| 保険料の要件 | なし | 初診日の前日時点の納付要件あり |
障害年金は「初診日」が出発点
障害年金では、初めて医師の診療を受けた日(初診日)に加入していた年金と、その前日時点の保険料の納付状況が確認されます(国民年金法第30条第1項)。手帳にはこの要件がないため、手帳を持っていても障害年金の要件を満たさないことがあります。
手帳の申請もまだなのに、障害年金のことを相談してもいいんでしょうか。
社労士もちろんです。2つは別の手続きなので、どちらが先でもかまいません。まずは初診日を一緒に確かめましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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手帳の等級が高ければ、障害年金も同じ等級になりますか?
同じになるとは限りません。障害年金の等級は、手帳とは別の基準で判定されます。
障害年金の等級を決める基準
障害基礎年金の1級・2級の状態は国民年金法施行令第4条の6と別表で、障害厚生年金の3級の状態は厚生年金保険法施行令第3条の8と別表第1で定められています(厚生年金保険法第47条)。実際の審査は、国の障害認定基準に沿って、診断書や病歴・就労状況等申立書をもとに行われます。
手帳ありで不支給、手帳なしで2級もある
基準が違うため、手帳の等級が高くても障害年金が不支給になることも、手帳を持っていなくても障害年金2級に認定されることもあります。手帳の等級で自分の可能性を決めつけず、障害年金の基準で判断することが大切です。
手帳を持っていると、障害年金の手続きで役立つことはありますか?
手帳を申請したときの診断書は、初診日を確かめる参考資料として使えます。

初診日の手がかりになる
日本年金機構の初診日証明書類の案内では、初診の病院の証明が取れない場合の参考資料の例として、診察券や領収書とあわせて「障害者手帳の申請時の診断書」を挙げています。手帳を持っている方は、手帳を申請した時期の記録が残っていないか、交付を受けた市区町村にも確かめてみてください。
精神の障害年金を受けると手帳も申請しやすい
厚生労働省の精神障害者保健福祉手帳制度実施要領では、精神障害を理由とする年金を受けている方は、診断書の代わりに年金証書等の写しを添えて手帳を申請でき、その場合は精神保健福祉センターの判定を経ずに交付するとしています。障害年金を先に受給してから手帳を申請する、という順番も選べます。
よくある質問
Q. 手帳と障害年金は、どちらを先に申請すべきですか?
A. 決まった順番はありません。2つは別の手続きなので、同時に進めても、どちらかを先にしてもかまいません。障害年金は初診日の確認や診断書の準備に時間がかかるため、受給を考えているなら早めに準備を始めましょう。
Q. 手帳を持っていれば、保険料の納付要件は問われませんか?
A. 問われます。手帳の有無に関係なく、障害年金では初診日の前日時点で保険料の納付要件を満たしているかが確認されます。手帳を持っていても、この確認は省略されません。未納の時期がある方は、年金事務所で納付記録を確認してから準備を進めてください。
Q. 精神障害者保健福祉手帳も、提出を求められますか?
A. 日本年金機構の障害基礎年金の案内で「ご本人の状況によって必要な書類」に挙がっているのは、身体障害者手帳と療育手帳です。精神の障害の審査は、精神の障害用の診断書と病歴・就労状況等申立書をもとに行われます。
Q. 20歳前に初診日があり、年金に入っていなかった場合は?
A. 年金に加入していなくても、20歳前に初診日がある方は障害基礎年金の対象になります。保険料の納付要件は問われませんが、本人の所得によって支給が制限される仕組みがあります。手帳の有無はこの場合も関係ありません。
まとめ:手帳がなくても、障害年金はあきらめなくていい
障害年金の請求に障害者手帳は必要なく、等級も手帳とは別の基準で決まります。手帳を持っていない方は、まず初診日とそのとき加入していた年金を確かめるところから始めてください。手帳を持っている方は、手帳を申請したときの診断書が初診日の手がかりになることも覚えておきましょう。
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参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について(厚生労働省)
・障害基礎年金を受けられるとき(日本年金機構)
・障害年金の初診日証明書類のご案内(日本年金機構)
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