病気やケガで会社を退職した後、生活の支えとなるのが「失業手当(雇用保険の基本手当)」です。
また、同時に「障害年金」の申請を考えている方も多いでしょう。
ここで多くの方が疑問に思うのが、「この2つは同時にもらえるのか?」ということです。
以前の記事で「傷病手当金と障害年金は調整される(減額される)」と解説しましたが、失業手当の場合はルールが全く異なります。
結論から言うと、失業手当と障害年金は、全額同時に受け取ることができます。
しかし、これには「ハローワークでどう説明するか」という非常にデリケートな問題が関わってきます。
下手に動くと「不正受給」と疑われたり、受給資格がないと判断されたりするリスクがあるのです。
この記事では、失業手当と障害年金の併給(へいきゅ)の仕組みと、ハローワークで絶対に間違えてはいけない「労働能力」の説明について解説します。
結論:調整なしで「両取り」が可能です

まずはお金の面での安心材料をお伝えします。
制度が違うため調整されない
- 傷病手当金(健康保険): 「病気で働けない」ことへの補償。障害年金と同じ目的のため、調整(減額)される。
- 失業手当(雇用保険): 「働く意欲があるのに仕事がない」ことへの補償。障害年金とは根拠が異なるため、調整されません。
つまり、障害年金をもらいながら、失業手当も満額受け取ることができるため、経済的には非常に大きな助けとなります。
直面する「定義の矛盾」という壁

お金の計算上は問題ありませんが、手続きを進める上で「定義の矛盾」にぶつかります。これが最大の難関です。
失業手当は「働ける人」が対象
ハローワークで失業手当の手続きをする大前提は、「今すぐ働ける能力と意欲があること」です。
窓口で「病気が辛くて全く働けません」と言ってしまうと、「では働けるようになってから来てください」と判断され、受給資格が得られません。
障害年金は「働きにくい人」が対象
一方で、障害年金(特に2級以上)は「病気のために労働や日常生活に制限があること」が要件です。
ここで、「失業手当をもらっている=バリバリ働ける元気な人」とみなされれば、障害年金の審査で「障害の状態ではない」と判断され、不支給になる恐れがあります。
この「働ける(失業手当)」と「働けない(障害年金)」の間で、どう整合性を取ればよいのでしょうか?
矛盾を解消する「条件付き就労」の考え方

このジレンマを解決する鍵は、「条件付きなら働ける」という状態を正しく主張することです。
「以前と同じ仕事」は無理でも…
ハローワークでは、以下のように説明することがポイントです。
「以前のような長時間労働や重労働は、病気のためにできません。しかし、短時間の軽作業や、障害への配慮がある環境であれば働く意欲と能力があります」
このように、「全く働けないわけではない(労働能力はある)」と主張することで、失業手当の受給要件を満たしつつ、障害年金の「労働に制限がある」という要件とも矛盾しない状態を作ることができます。
求職活動は「障害者枠」などを活用する
実際に求職活動を行う際も、無理に一般枠のフルタイムに応募する必要はありません。
ハローワークの「専門援助部門(障害者窓口)」に相談し、ご自身の病状に理解のある職場や、障害者雇用枠の求人を探す活動を行えば、立派な求職活動として認められます。
手続きの順番と注意点
スムーズに両方を受給するためには、手続きのタイミングも重要です。
①まずは「受給期間延長」の手続きを
退職直後で体調が悪く、すぐに就職活動ができない場合は、ハローワークで「受給期間の延長」の手続きを行ってください。
これにより、失業手当をもらう権利を最大3年間(本来の1年+3年で計4年)キープしたまま、治療に専念できます。
②障害年金の申請準備を進める
延長期間中に体調を整えつつ、障害年金の申請準備を進めます。
障害年金が決定し、体調が「条件付きなら働ける」レベルまで回復したら、ハローワークで求職申し込みを行い、失業手当の受給をスタートさせます。
この順番であれば、堂々と両方の制度を利用することができます。
誤解を恐れずに正しく受給するために、次にあなたがすべきこと

失業手当と障害年金の併給は、「ズル」ではなく正当な権利です。
しかし、説明の仕方を間違えると損をしてしまいます。
①主治医に「働ける範囲」を確認する
ハローワークに行く前に、主治医に「今の状態で、週何時間くらいなら働いていいか(ドクターストップがかかっていないか)」を確認しましょう。
医師から「求職活動の許可」が出ていれば、自信を持って手続きできます。
②ハローワークでは「正直」かつ「慎重」に
窓口で「全部大丈夫です」と元気すぎるアピールをする必要はありません。
「週20時間程度の事務職を探しています」など、具体的な制限事項を正直に伝えましょう。
それが障害年金の審査資料との整合性を守ることにも繋がります。
③判断に迷ったら「専門家」に相談する
「自分の病状で失業手当をもらっていいのか不安」「年金事務所とハローワークで言うことが食い違ってしまいそう」という方は、行動する前に専門家へご相談ください。
私たちは、あなたの経済的不安を解消するために、両方の制度を矛盾なく最大限に活用するアドバイスを行っています。
