うつ病や適応障害などで会社を休職し、傷病手当金を受け取りながら療養されている方にとって、一番の不安は「お金」のことではないでしょうか。
「傷病手当金はいつまで受給できるのか」
「支給が終わった後の生活はどうなるのか」
「障害年金を申請したいけれど、傷病手当金と同時にもらえるのか」
傷病手当金の受給期間である「1年6ヶ月」という期限が近づくにつれ、こうした焦りや不安は大きくなるものです。
障害年金は非常に心強い制度ですが、傷病手当金との間には「併給調整(へいきゅうちょうせい)」という、一見すると非常に複雑なルールが存在します。
結論から申し上げれば、両方の制度を利用することは可能ですが、受け取り方には明確な優先順位と、金額の調整があります。
何も知らずに申請を進めてしまうと、「後から多額の返金を求められた」「本来もらえるはずの時期に無収入になってしまった」といった事態を招きかねません。
今回は、地元の頼れる専門家として、傷病手当金と障害年金の関係、そして「損をしないためのスケジュール戦略」を詳しく解説します。
まずは基本を整理!傷病手当金と障害年金の違い
具体的な調整ルールの話に入る前に、まずは2つの制度の役割を整理しておきましょう。
ここが整理できていると、なぜ「調整」が必要なのかが理解しやすくなります。
傷病手当金とは(健康保険)
傷病手当金は、会社員や公務員の方が加入している「健康保険」の制度です。
目的:
病気やケガで働けなくなった期間の、本人と家族の生活を保障するための「短期的な所得保障」です。
対象:
休職中で給与の支払いがない健康保険加入者。
期間:
支給開始から通算して「最大1年6ヶ月」です。
いわば、「回復して復職するまでのリリーフ」のような役割です。
障害年金とは(国民年金・厚生年金)
障害年金は、すべての国民が加入する「年金」の制度です。
目的:
障害によって生活や仕事に支障がある場合の「長期的な生活保障」です。
対象:
初診日に年金制度に加入しており、納付要件を満たしている方。
期間:
障害の状態が認定基準に該当する限り、原則として「無期限(※数年ごとの更新あり)」で受給できます。
こちらは、「長期的な生活の土台」を支える役割を担っています。
この2つは、健康保険(短期)と年金(長期)という異なる制度ですが、どちらも「働けないことによる所得の減少を補う」という目的が共通しています。
そのため、同じ病気が原因である場合には「二重取り」にならないよう調整が行われるのです。
最大の疑問「同時に受給したらどうなる?」調整の仕組み

「傷病手当金をもらっている最中に障害年金が決まったら、両方の全額をもらえるのか?」という質問をよくいただきます。
結論は「NO」です。
「両方満額もらえる」は間違い!併給調整のルール
同じ病気やケガで、傷病手当金と障害年金(障害厚生年金・障害基礎年金)の両方を受け取れる期間が重なった場合、「障害年金」が優先的に支給されます。
そして、重なっている期間の「傷病手当金」は支給が止まる(支給停止になる)、というのが基本的なルールです。
これを「併給調整(へいきゅうちょうせい)」と呼びます。
【重要】「差額」が支給されるケース(金額例で解説)
「支給が止まる」と聞くと、「損をしてしまうのではないか」と不安になるかもしれませんが、安心してください。
全額がストップするとは限りません。
もし、「傷病手当金の日額 > 障害年金の日額(※)」であれば、その「差額分」は、引き続き傷病手当金として支給されます。
(※障害厚生年金と障害基礎年金の合計額を360で割った額)
具体的な数字でイメージしてみましょう。
ケース:傷病手当金が月額18万円、障害年金が月額12万円の場合
まず、優先される「障害年金 12万円」が全額支給されます。
次に、傷病手当金の「差額分」である 6万円(18万-12万) が健康保険から支給されます。
結果として、あなたの手元に入る合計額は 18万円 となり、傷病手当金のみを受給していた時と同じ金額が確保されます。
もし障害年金の方が高い(例:年金20万、手当金18万)場合は、傷病手当金は全額停止となり、年金20万円のみを受け取ることになります。
つまり、「トータルで受け取れる金額は、どちらか高い方の額に揃えられる」という仕組みです。
これを知っておくだけでも、経済的な見通しが立てやすくなるはずです。
損をしないための受給スケジュール戦略

仕組みが分かったところで、次に重要なのが「いつ申請するか」というスケジュール戦略です。
実は、申請のタイミング次第で、その後の生活の安定度が大きく変わります。
戦略1:「傷病手当金が終わる直前」に申請準備を始める
最も一般的で、リスクが少ないとされる選択肢です。
傷病手当金の満了(1年6ヶ月)の3〜4ヶ月前を目安に準備を始め、手当金が切れるタイミングで障害年金の支給が始まることを目指します。
メリット: 受給期間が重ならない(または重なる期間が短い)ため、前述の複雑な差額調整の計算を気にする必要がなく、家計の管理がシンプルです。
デメリット: 障害年金の審査には通常3〜4ヶ月、長いと半年ほどかかります。
準備が遅れると、傷病手当金が切れた後に「無収入の空白期間」ができてしまうリスクがあります。
戦略2:障害認定日(1年6ヶ月時点)が来たらすぐに申請する
傷病手当金を受給中であっても、初診日から1年6ヶ月が経過した「障害認定日」が来たら、迷わずすぐに申請する戦略です。
メリット: 1日でも早く障害年金の受給権を確定できるという絶大な安心感があります。
また、障害基礎年金のみ(3級がないケース)の方は、差額調整によって実質的な手取りが増えるケースもあります。
デメリット: 手当金と年金の入金時期がずれることで、一時的に健康保険組合への返金手続きが発生するなど、事務作業が煩雑になりがちです。
【注意点】過去に遡って請求する場合の「返還リスク」
ここで、プロとして「耳の痛い」お話を一つしなければなりません。
それが「遡及請求(そきゅうせいきゅう)」に伴う返還リスクです。
何らかの理由で申請が遅れ、数年分まとめて障害年金を受け取れることになった場合、その「さかのぼった期間」に傷病手当金を受け取っていたら、すでに受け取った傷病手当金を、健康保険組合へ返還しなければなりません。
返還額は、重なっている期間の年金額(または手当金全額)となります。
数十万円から、場合によっては百万円単位になることもあります。
「まとまったお金が入った!」と喜んで使い込んでしまうと、後から来る返還請求に対応できなくなり、生活が破綻しかねません。
過去に遡って申請する場合は、必ず「返金分を差し引いて考える」冷静さが必要です。
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「傷病手当金が切れてから」では遅すぎるかもしれません。
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遡及請求のメリットは大きいですが、今回お伝えした「返還リスク」も含め、正しい知識が必要です。
仕組みと注意点を分かりやすくまとめています。
まとめ:「空白期間」を作らないために、早めの計画を

傷病手当金と障害年金。
この2つの制度は、あなたの療養生活を支える車の両輪のようなものです。
調整という仕組みがある以上、どちらか一方を「得」にする裏技はありません。
しかし、「無収入の期間を作らない」「制度の狭間で困窮しない」ための「正しい順序」は確実に存在します。
休職期間が長引くと、どうしても視野が狭くなり、目の前のお金のことで頭がいっぱいになってしまうものです。
だからこそ、早めに専門家と一緒にスケジュールを立て、将来の不安を一つずつ消していくことが、治療に専念するための第一歩となります。
あなたの状況に合わせた「最適解」をシミュレーションします
「私の傷病手当金はいつまで?」
「今すぐ申請したら、いくら返金が必要になるの?」
「結局、いつ動くのが一番損をしない?」
こうした疑問への答えは、お一人おひとりの給与額や年金加入記録、病状によってすべて異なります。
中四国障害年金相談センターでは、中讃エリアの皆様の個別の状況をお伺いし、「損をしない受給スケジュール」を具体的にアドバイスしています。
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