監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法および日本年金機構の障害認定基準に基づき作成しています。
この記事の結論
治ってきていることを理由に障害年金が受けられない、という決まりはありません。判断されるのは治り具合ではなく、国民年金法施行令別表・厚生年金保険法施行令別表第1に定める障害の状態に当てはまるかどうかです。
症状が落ち着いている今も残る制限を、診断書に書いてもらってください。
障害年金でいう「治った」は、器質的欠損や変形、機能障害が残る状態を含みます。日常語の「完治」とは意味が違います。
治療を続けるうちに症状が落ち着いてくると、「この状態では申請しても無理なのではないか」と考えてしまう方がいらっしゃいます。主治医から「だいぶ良くなりましたね」と言われた後だと、なおさらです。
ただ、障害年金の審査で見られているのは、治ったかどうかではありません。この記事では、障害認定基準にある「治った」の意味と、症状が落ち着いている時期に申請するときの考え方を整理します。
治ってきていると、障害年金はもらえないのですか?
治ってきていること自体を理由に、障害年金が受けられなくなることはありません。審査で判断されるのは、治り具合ではなく、障害の状態が等級に定められた程度に当てはまるかどうかです。

見られているのは「いま残っている制限」です
障害の程度は、国民年金法施行令別表(1級・2級)と厚生年金保険法施行令別表第1(3級)に定められた状態に当てはまるかどうかで認定されます。病名でも、治療の経過でもありません。症状が軽くなっていても、日常生活や仕事に制限が残っていれば、その制限が評価の対象になります。
寛解でも受給できる場合があります
寛解は、症状が落ち着いている状態を指す言葉で、完治とは違います。服薬や通院を続けなければ状態を保てない、疲れやすさが残っていて働ける時間が限られる、といった事情があれば、それは制限として残っています。寛解という言葉だけで判断されるわけではありません。
障害年金でいう「治った」とは、どういう意味ですか?
障害が残っている状態も「治った」に含まれます。日常語の「元通りになった」とは意味が違うため、ここを取り違えると判断を誤ります。
障害認定基準に書かれている定義
障害認定基準の「第1 一般的事項」には、次のように書かれています。「器質的欠損若しくは変形又は機能障害を残している場合は、医学的に傷病が治ったとき、又は、その症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待し得ない状態に至った場合」。障害が残っていることを前提にした言葉だと分かります。
| 日常語の「治った」 | 障害年金の「治った」 | |
|---|---|---|
| 意味 | 症状がなくなり、元の状態に戻ること | 症状が安定し、治療を続けても改善が見込めない状態に至ること |
| 障害が残っているか | 残っていない | 残っている場合を含む |
| 受給への影響 | — | 「治った」と判断されても、障害の状態が等級に当てはまれば受給できる |
「治った」ことで、請求できる時期が早まる場合もあります
障害認定日は、初診日から1年6か月を経過した日です。ただし障害認定基準では「1年6月以内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)」とされています。つまり「治った」は、不利にはたらく言葉とはかぎりません。1年6か月を待たずに請求できる方向に働くこともあります。
主治医から「落ち着いてきましたね」と言われました。もう申請はできないということでしょうか。
社労士そうとはかぎりません。落ち着いてきたことと、制限が残っていないことは別の話です。通院や服薬を続けている、無理をすると寝込む、できる家事が限られているといった事情があれば、それを診断書に書いていただくところから始めましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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症状が落ち着いている時期に申請しても大丈夫ですか?
申請して差し支えありません。ただし、調子の良い日の状態だけが書類に残ると、実際より軽く評価されます。波がある傷病ほど、この点に注意が必要です。
悪いときの状態も、あわせて伝える
診察は調子の良い日に行けることが多く、その日の様子だけが診断書に反映されがちです。「調子の悪い日が月に何日あるか」「そのとき何ができなくなるか」を数えてメモにし、受診時に渡してください。書かれていない事情は、審査では存在しないものとして扱われます。
続けている治療そのものが、状態を示す材料になります
服薬を続けている、定期的に通院している、副作用で動ける時間が限られている。こうした事情は、落ち着いた状態を保つために必要な支えです。治療をやめられない理由を具体的に書いておくと、状態が伝わりやすくなります。
ほかによくある誤解には、どんなものがありますか?
「働けているから対象外」「寛解と書かれたら終わり」の2つが、特に多い誤解です。どちらも、実際の審査の考え方とは違います。

誤解1:働けていると、もう対象にならない
働いていることだけを理由に対象外になることはありません。仕事の内容、職場で受けている配慮、勤務時間や欠勤の状況まで含めて見られます。短時間勤務にしてもらっている、単純な作業だけを任されている、といった実情はそのまま書いて差し支えありません。
誤解2:診断書に「寛解」と書かれたら、もう無理
寛解という記載だけで結論が決まるわけではありません。ただし、その一語しか書かれていないと、制限が残っていることが伝わりません。服薬の必要性や、日常生活で続いている不自由さを、あわせて記載してもらってください。
よくある質問
Q. 「寛解」と「完治」は同じ意味ですか?
A. 違います。寛解は症状が落ち着いている状態で、再び悪くなる可能性が残っています。完治は病気そのものが治りきった状態を指します。障害年金の審査では、どちらの言葉が使われているかより、いま残っている制限が見られます。
Q. 障害認定日のころは重かったのに、今は軽い場合はどうなりますか?
A. 障害認定日の時点の状態で請求する方法があります。当時の診断書が用意できれば、さかのぼって受け取れる場合があります。今の状態が軽いことだけを理由に、あきらめる必要はありません。
Q. すでに治療を終えている場合でも申請できますか?
A. できます。治療が終わっていても、障害が残っていれば認定の対象です。むしろ症状が固定した状態は、障害年金の「治った」に当てはまります。当時の診断書や受診の記録を集めるところから始めてください。
Q. 受給が始まった後に症状が良くなったら、支給は止まりますか?
A. 更新の審査で等級に当てはまらないと判断されれば、支給が止まることがあります。ただし自己判断で止まるわけではなく、診断書の審査を経て決まります。再び悪くなったときに支給を再開する手続きも用意されています。
まとめ:治り具合ではなく、残っている制限で決まります
障害年金の審査で見られるのは、治ったかどうかではなく、障害の状態が等級に定められた程度に当てはまるかどうかです。障害年金でいう「治った」は、障害が残っていることを前提にした言葉でもあります。落ち着いてきたからという理由だけで、申請をあきらめる必要はありません。
大切なのは、いま残っている制限を書類に残すことです。調子の悪い日が月に何日あるか、そのとき何ができなくなるか。数えてメモにしておけば、診断書にも申立書にも反映できます。ご自身の状態が伝わる書き方が分からないときは、書類を出す前にご相談ください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第1 一般的事項(日本年金機構・PDF)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(日本年金機構)
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