こんにちは。中四国障害年金相談センターの社会保険労務士、請川です。
障害年金の相談で非常に多い質問のひとつが、「昔から症状が続いているのですが、今から申請して過去分をさかのぼって受け取れますか?」というものです。
実は、一定の条件を満たしていれば、過去にさかのぼって障害年金を受け取れる制度(認定日請求)が存在します。
ただし、仕組みを誤解すると本来もらえるはずの金額を逃してしまうこともあります。
この記事では、「さかのぼり受給」の仕組みや対象になるケース、そして失敗しやすいポイントを専門家の視点からわかりやすく解説します。
障害年金は過去にさかのぼって受け取れるの?

障害年金には、「認定日請求」と呼ばれる、過去の状態にさかのぼって受給できる制度があります。
認定日とは?
認定日とは、
初診日(最初に医師の診察を受けた日)から1年6か月後
または
症状が固定した日
のことです。
この時点で障害等級(1級・2級・3級)に該当していれば、後から申請してもその当時までさかのぼって受け取れる可能性があります。
さかのぼって受け取れるのは最大「5年分」
法律の「時効」により、さかのぼって受給できるのは最大5年分
に限られています。
つまり、認定日時点の状態が障害等級に該当していても、
5年以上前の分は法律上支給できません。
さかのぼり受給が認められるための2つの条件

さかのぼって受け取るためには、以下の2つが必須です。
① 認定日時点の診断書が入手できること
認定日時点の医師の診断書が必要です。
病院が閉院している、カルテが廃棄されているなどで入手できない場合、さかのぼり受給は非常に難しくなります。
② 認定日時点で障害等級に該当していたこと
現在の症状が重いかどうかは関係ありません。
“認定日時点の状態” が審査の対象です。
よく誤解されますが、今が重い=昔も重かったとは判断されません。
この2点が揃って初めて、さかのぼり受給が認められます。
さかのぼり受給によくある誤解
今の症状が重ければ遡れると思っている
実際には、現在の状態ではなく過去(認定日時点)の状態が基準です。
昔の病院が閉院していると絶対に無理と思い込む
閉院していても、後継医療機関がカルテを引き継いでいるケースがあります。
まずは確認が必要です。
働いていたから遡及はできないと思っている
勤務していても、「頻繁なミス」「早退・遅刻が多い」「配慮が必要」など、制限下での就労は障害の状態として認められる場合があります。
さかのぼり受給が不支給になりやすい典型ケース

認定日時点の診断書が取得できない
病院が閉院している、カルテがない、医師が転勤したなどで診断書を作成できない場合、遡りは基本的に困難です。
当時の状態が軽症扱いになっている
認定日時点で、医師の診断書が「軽度」と判断していると現在が重くてもさかのぼりは認められません。
病歴・就労状況申立書と診断書の内容が一致しない
提出書類に矛盾があると、「信用性が低い」と判断され不支給になりやすいです。
初診日の誤り
初診日が正しく証明できないと、制度そのものの対象外となります。
さかのぼり受給を成功させるためのポイント

認定日時点の病院情報を確実に把握する
閉院・合併・カルテ廃棄の有無を必ず確認します。
当時の状態を正確に思い出す
症状、職場での困りごと、家族の支援など、当時の生活を具体的に振り返ることが重要です。
医師への診断書依頼方法を工夫する
認定日時点の状態を正確に伝えるため、「当時のメモ」「家族の証言」「職場の記録(可能なら)」などを整理して伝えると精度が上がります。
書類の矛盾をなくす(専門家のサポートが有効)
認定日請求は通常の申請より難易度が高く、書類不備による不支給が多い部分です。
まとめ|さかのぼり受給は可能性のある制度ですが慎重さが必要です

さかのぼり受給は、正確な初診日の特定・認定日時点の診断書・書類の整合性がそろえば、大きな支えとなる制度です。
一方で、専門的な判断が必要な場面も多く、「できるだけ早く相談してもらうことで救えるケース」が多数あります。
過去の状態に不安がある方や、さかのぼり受給ができるかどうか迷っている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
状況を丁寧にうかがい、最適な進め方をご提案いたします。
