障害年金を受給する際、多くの方が気にされるのが「実際にいくらもらえるのか」という点です。
障害年金の金額は、加入していた年金制度や障害の等級によって基本の金額が決まりますが、実はそれだけではありません。
扶養している配偶者や子供がいる場合、一定の金額が「加算」として上乗せされる仕組みがあるのです。
この家族手当のような加算制度があるかどうかで、受給額は年間で数十万円単位変わることもあります。
この記事では、障害年金における配偶者や子供への加算ルールについて、専門家である社会保険労務士が詳しく解説します。
障害年金における加算制度の基本構造

まず理解しておかなければならないのは、障害年金の加算制度は「どの年金をもらっているか」と「何級か」によって、対象となる家族の範囲が異なるという点です。
加算対象となる年金の種類
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。
家族に対する加算がつくのは、原則として「1級」または「2級」の認定を受けた場合のみです。
残念ながら、障害厚生年金のみに存在する「3級」には、家族に対する加算制度はありません。
また、障害基礎年金では「子供」のみが対象となり、障害厚生年金では「配偶者」も対象になるという決定的な違いがあります。
つまり、厚生年金加入中に初診日のある1級・2級の方は、子供と配偶者の両方の加算を受けられる可能性があります。
加算金受給の基本条件
加算を受けるための絶対的な条件は、受給者本人と対象となる家族との間に「生計維持関係」があることです。
生計維持関係とは、簡単に言えば「その家族を本人の収入で養っている」という状態を指します。
具体的には、対象となる家族の年収が将来にわたって850万円未満であることが一つの目安となります。
別居していても、仕送りをしていたり健康保険の扶養に入っていたりするなど、生計を共にしている事実が証明できれば加算の対象となり得ます。
配偶者がいる場合の配偶者加給年金
障害厚生年金の1級または2級を受給している方に配偶者がいる場合、年金に「配偶者加給年金」が上乗せされます。
これは厚生年金独自の非常に手厚い制度です。
配偶者加給年金の要件
加算の対象となる配偶者は、原則として65歳未満であることが条件です。
また、本人によって生計を維持されている必要があります。
配偶者自身が厚生年金に20年以上加入して老齢年金を受け取っている場合や、配偶者自身が障害年金を受給している場合などは、加算が停止される(受け取れない)ことがありますので注意が必要です。
事実婚の状態であっても、住民票の続柄が「夫(未届)」「妻(未届)」となっている場合や、生計を共にしている客観的な証拠があれば、認められるケースが多くあります。
支給停止となる収入制限
配偶者の収入が一定額を超えると、生計維持関係がないとみなされ加算はつきません。
この基準は「年収850万円未満」と設定されており、自営業などの場合は所得額で判断されるため、事前の確認が重要です。
また、配偶者が65歳になると、配偶者自身の老齢基礎年金が支給され始めるため、障害年金の加算としての「配偶者加給年金」は終了します。
その代わり、配偶者自身の年金に「振替加算」という形でお金が上乗せされる仕組みがありますが、これは配偶者の生年月日によって金額が決まります。
子供がいる場合の子供の加算
障害基礎年金および障害厚生年金の1級・2級受給者に子供がいる場合、「子の加算」がつきます。
この加算は、子供の人数に応じて金額が決まっています。
加算対象となる子供の範囲
加算の対象となるのは、18歳到達年度の末日(高校卒業のタイミング)までの子供です。
ただし、子供自身に障害がある場合は、20歳未満まで加算の期間が延長されます。
子供が結婚したり、他の方の養子になったりした場合は対象から外れます。
なお、この「子供」には、実子だけでなく養子も含まれます。
障害年金の受給が始まった後に生まれた子供や、受給開始後に養子縁組をした子供についても、手続きを行うことで加算を追加することが可能です。
子供の人数別加算金額
子の加算額は、令和7年度の基準で、第1子・第2子は1人につき年間239,300円、第3子以降は1人につき年間79,800円となっています。
子供が3人いる1級 2級受給者の場合、基本の年金額に加えて年間約55万9千円ほどが上乗せされる計算になります。
月額に直すと4万6千円以上になり、子育て世帯にとっては極めて大きな支えとなります。
この金額は物価変動などに応じて毎年改定が行われますので、最新の金額を常にチェックしておくことが大切です。
加算金を受け取るための手続き
家族の加算は、自動的に計算されるわけではありません。
申請時に家族の情報を正しく届け出、生計維持を証明する書類を提出する必要があります。
必要書類と手続きの流れ
障害年金の裁定請求書には、家族の情報を記入する欄があります。
そこに記載した上で、戸籍謄本、世帯全員の住民票、配偶者や子供の所得証明書などを添付します。
もし別居している家族の加算を希望する場合は、健康保険証の写しや振込記録など、追加の証明書類が求められることがあります。
近年ではマイナンバーによって対応できる場面も増えてきています。
これらを年金事務所に提出し、審査を経て承認されることで、初めて加算を含めた金額が振り込まれるようになります。
生計維持関係の認定基準
生計維持関係の認定は、基本的には「同居していること」が前提となりますが、単身赴任や子供の通学などの理由による別居であれば問題ありません。
しかし、単に住民票が一緒なだけでは不十分な場合もあり、実態として本人の収入が家族の生活を支えているかどうかが厳格にチェックされます。
特に内縁関係の場合、第三者からの生計同一に関する申立書が必要になるなど、手続きが非常に煩雑になる傾向があります。
ライフスタイルの変化と加算申請

障害年金の受給期間中に、結婚、出産、離婚、子供の成人など、家族構成が変わることはよくあります。
これに伴い、加算金も変動します。
事後的な加算申請の仕組み
「受給開始時は独身だったが、その後に結婚した」
「受給中に子供が生まれた」
という場合、後から加算を追加する手続きを行うことができます。
これを「事後加算」と呼びます。届け出た月の翌月分から加算が開始されますので、生活の変化があったらすぐに手続きをすることが重要です。
遅れて提出しても、過去に遡って加算を受け取ることは原則としてできませんので注意してください。
加算終了となる事由
逆に、加算がなくなるケースもあります。
配偶者と離婚した、子供が18歳の年度末を迎えた、子供が養子に出た場合などです。
これらの変化があったときは、速やかに不該当届などを提出しなければなりません。
手続きを忘れて加算を受け取り続けてしまうと、後から「過払い」として一括返還を求められることになり、家計に大きなダメージを与えることになります。
まとめ
障害年金の加算制度は、障害を抱えながら家族を支える受給者の生活を支えるための重要なセーフティネットです。
配偶者加給年金も子の加算も非常に大きな金額であり、これがあることで治療に専念できたり、子供の教育費を確保できたりする方が多くいらっしゃいます。
しかし、3級には加算がつかないことや、事後の手続きが必要なことなど、知らなければ損をしてしまうルールが存在します。
少しでも疑問に思われたら、専門家に相談することをお勧めします。
