障害年金の申請において、多くの方が直面する複雑な壁の一つに「複数の病気やケガを抱えている場合、どう評価されるのか」という問題があります。
「うつ病で通院しているが、心臓の持病もある」
「肢体の不自由に加え、最近は内臓疾患も悪化してきた」
といったケースは決して珍しくありません。
このような場合、バラバラの障害を一つにまとめて評価する「併合認定(へいごうにんてい)」という仕組みを活用することで、単独では届かなかった等級への認定や、上位等級への繰り上がりが可能になる場合があります。
しかし、この制度は非常に緻密なルールに基づいており、単純な足し算ではありません。
今回は、誤解の多い併合認定の仕組みと、実務上のポイントを詳しく解説します。
2つ以上の障害をまとめる「併合認定」の基本ルール

併合認定とは、初診日などが異なる複数の障害がある場合に、それらを併せた障害の程度を認定する仕組みです。
併合番号とマトリックス表による判定
障害年金の審査では、個々の障害の程度を「併合判定参考表」に基づき、1号から13号までの「併合番号」に置き換えます。
【併合番号の正確な区分】
| 1級相当 | 2級相当 | 3級相当 | 障害手当金相当 | 不該当 |
| 1号 | 2号・3号・4号 | 5号・6号・7号 | 8号・9号・10号 | 11号・12号・13号 |
これらの番号を、日本年金機構が定める「併合(加重)認定表」というマトリックス表(縦軸と横軸にそれぞれの号数を当てはめた図)に照らし合わせ、交差する箇所の数字(号数)によって、最終的な等級が決定されます。
例えば、原則として「2級相当(2号〜4号)」の障害が2つある場合、マトリックス表での交点は「1号(1級)」となり、1級へと繰り上がります。同様に、3級同士の組み合わせでも2級へ繰り上がるパターンが存在します。
併合されない障害(総合認定)への注意点
ここで非常に重要なのが、全ての障害がこの「号数の足し算(併合)」で決まるわけではないという点です。
内科的疾患(例:心疾患と腎疾患)や精神疾患などが併存している場合は、個別に号数を出して足すのではなく、全体を一つの障害としてトータルで評価する「総合認定」が行われるのが実務上の通例です。
この場合、機械的な計算通りにはいかないケースもあるため、より慎重な準備が必要となります。
【出典:日本年金機構「障害認定基準 第2章 併合等認定基準」】
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-2-1.pdf
受給のチャンスを広げる「初めて2級」の仕組み

特に基礎年金(国民年金)の対象となる方にとって、非常に強力な救済策となるのが「初めて2級」と呼ばれる制度です。
単独では受給できなくても、合算で受給権が発生する
本来、障害基礎年金は単独で2級以上の状態でなければ受給できません。
しかし、この制度を活用すれば、以下のようなステップで受給権を「初めて」発生させることが可能です。
- 以前から障害(前障害)があった:
当時は3級相当(併合番号5号〜7号など)や、さらに軽い状態(11号〜13号など)であったため、基礎年金の受給権がなかった。 - 新たに別の障害(基準障害)が生じた:
前とは全く別の病気やケガで新たに受診した。 - 合算して基準を満たした:
65歳に達する前日までの間に、前後の障害を合わせると、初めて2級以上の基準(併合番号4号以上)を満たした。
この制度の最大の利点は、過去に「3級程度だから」「未納があったから」と諦めていた障害であっても、それを「前障害」として活用することで、現在の障害と組み合わせて受給を勝ち取れる可能性がある点にあります。
納付要件は「後から起きた障害」の時点で判定される
ここが最も重要なポイントですが、保険料の納付要件は「後から起きた障害(基準障害)」の初診日前日においてチェックされます。
たとえ以前からある先発障害(前障害)の時に納付要件を満たせなかったとしても、新しく起きた障害の初診日において納付要件を満たしていれば、合算して受給できるチャンスがあります。
「昔、未納があったから自分は一生もらえない」と思い込んでいる方でも、今の納付状況が適正であれば道が開けるのです。
ただし、先発障害についても「いつ始まったのか」という初診日の特定(証明)は不可欠です。
納付要件は問われませんが、受診状況等証明書などで客観的な記録を示す必要があるため、古い履歴の掘り起こしが重要になります。
【重要】2つの病気に「因果関係」がないこと

この「初めて2級」を利用するためには、前後の障害が医学的に「別々の病気」であることが絶対条件です。
もし、2つの病気の間に「相当因果関係」があるとみなされると、すべては一番最初の病気の初診日で判断されることになります。
そうなると、納付要件の判定も「大昔の初診日」まで遡ってしまい、当時の未納が原因で受給できなくなるという最悪のケースも起こり得ます。
「別々の病気として切り離せるのか」
「それとも関連した病気とみなされるのか」
この判断こそが、併合申請における実務上の最難関であり、社労士の専門性が問われる部分です。
社労士のアドバイス:複雑な併合申請を成功させる戦略
併合認定や「初めて2級」の申請は、通常の申請に比べて事務負担や立証の難易度が格段に上がります。
複数の病院から「有効な診断書」を同時に揃える
併合認定を狙う場合、複数の診断書を揃える必要があります。
障害年金の診断書には「現症日(その時の状態)」から3ヶ月以内という有効期限があります。
複数の病院を掛け持ちしている場合、すべての診断書をこの期限内に、かつ内容に齟齬がないよう揃えるには、非常に精密なスケジュール管理が求められます。
症状の「優先順位」を整理した申し立て書
複数の疾患がある場合、それらがどのように干渉し合い、日常生活を制限しているのかを論理的に説明しなければなりません。
単に病名を並べるだけでは、審査官に実態が伝わらず、低く評価されてしまうリスクがあります。
どの症状を主軸に据え、どのように合算の正当性を主張するかという「戦略」が成否を分けます。
香川・中四国エリアで複雑なケースに悩む方へ
併合認定は、いわば高度なパズルです。
古いカルテを探し出し、複雑な号数計算を行い、最も有利な申請ルートを導き出す。
この作業をご自身で行うのは大変な困難を伴います。
観音寺市や丸亀市をはじめとする地元香川の皆さま、そして中四国エリアで複数の疾患に悩まれている方。
私たちは、その複雑な病歴を整理し、あなたが本来受け取るべき権利を最大限に守るためのパートナーでありたいと考えています。
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併合認定を理解するためには、まず各等級の基準を知ることが不可欠です。
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併合認定によって等級が1級上がると、受け取れる年金額は大幅に増額されます。
最新の支給額データをもとに、等級アップが家計にどのようなインパクトを与えるのかをご確認ください。
まとめ:個別の症状で諦めず、「合計の力」で未来を支える
障害年金は、一つの病気だけで戦う必要はありません。
複数の障害があることは、それだけ日々の生活に多大な苦労があるという証です。
併合認定や「初めて2級」は、その困難を総合的に評価し、救済するための制度です。
「自分の状態では無理だ」と個別に判断せず、全体像を捉え直すことで、新しい道が見えてくるはずです。
複雑な制度だからこそ、専門家を頼り、最善の準備をして申請に臨んでください。



