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アルコール依存症はもらえない?申請を諦める前に知るべき別の可能性

アルコール依存修正1

監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法および日本年金機構の障害認定基準に基づき作成しています。

この記事の結論

アルコール依存症でも、明らかな身体依存があり、精神神経症状で日常生活が著しく制限されていれば、障害年金の対象になります(障害認定基準 第8節)。

審査では原因と療養の経過が考慮されるため、治療を続けている記録を残すことが必要です。

飲酒が原因でも自動的に不支給にはなりませんが、正当な理由なく療養の指示に従わない場合は給付を制限できると定められています(国民年金法第70条)。

「アルコール依存症では障害年金はもらえないと聞いた」。ご本人やご家族から、こうしたご相談をよくいただきます。

実は、障害認定基準はアルコールによる精神障害を対象から外していません。対象外になるのは、一部の状態に限られます。この記事では、認定基準と法律の条文をもとに、対象になる場合とならない場合の線引き、飲酒が原因であることの扱い、依存症以外の障害で請求できる道を整理します。

目次

アルコール依存症は障害年金の対象になりますか?

対象になります。障害認定基準は、アルコールなどによる精神障害を「症状性を含む器質性精神障害」の項目で扱っています。

認定基準での位置づけ

障害認定基準 第8節は、アルコールや薬物などの精神作用物質の使用による精神障害を、器質性精神障害(脳の変化による精神障害)の項目に含めると定めています。病名だけで対象外になるわけではありません。

対象になる状態・ならない状態

ただし、認定基準は「精神病性障害を示さない急性中毒」と「明らかな身体依存の見られないもの」は認定の対象とならないとしています。

状態認定基準での扱い
明らかな身体依存があり、精神神経症状で生活が制限されている対象(器質性精神障害の基準で判定)
精神病性障害を示さない急性中毒対象外
明らかな身体依存が見られない対象外

ご自身の状態がどちらに当たるかは、主治医の所見で決まります。まずは診断書にどう書かれる見込みかを確認してください。

飲酒が原因だと、支給が制限されますか?

飲酒が原因であることだけで、自動的に不支給にはなりません。

アルコール依存修正2

法律は「行わないことができる」

国民年金法第70条(厚生年金では第73条の2)は、重大な過失や、正当な理由なく療養に関する指示に従わないことで障害を生じさせたり重くしたりした場合に、給付の全部又は一部を「行わないことができる」と定めています。必ず止めるという書き方ではありません。

治療を続けていることが大切な理由

この条文には「療養に関する指示に従わない」ことが明記されています。認定基準も、精神作用物質による精神障害は「その原因に留意し、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する」としています。通院や断酒の取り組みを続けている記録は、審査で大切な材料になります。

お酒をやめられない時期もありました。それだけでもう請求できないのでしょうか?

社労士

過去に飲んでいた時期があること自体で、請求できなくなるわけではありません。いま治療につながり、続けている経過を主治医に診断書へ書いてもらうことが大切です。

ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか

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依存症以外の障害で請求できるのはどんな場合ですか?

認知障害などの脳の障害、うつ病などの併発、肝硬変などの体の障害がある場合は、それぞれの基準で請求できます。

認知障害や人格変化が残った場合

長年の飲酒で記憶や判断の力が落ちた場合は、器質性精神障害の基準で判定されます。認定基準の例示は次のとおりです。

等級器質性精神障害の例示(障害認定基準 第8節)
1級高度の認知障害、高度の人格変化などが著明なため、常時の援助が必要なもの
2級認知障害、人格変化などが著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの など

うつ病などを併発している場合

うつ病や双極性障害は「気分(感情)障害」として認定基準の区分にあります。依存症とあわせて診断を受けている場合は、その病名も診断書に書いてもらい、生活への支障を具体的に伝えます。

アルコール性肝硬変は、どんな条件で認定されますか?

継続して必要な治療を受けていることと、検査日より前に180日以上お酒を飲んでいないことが確認できた場合に限り、認定されます。

アルコール依存修正3

肝疾患の基準に付いた特別な条件

障害認定基準 第13節(肝疾患による障害)は、アルコール性肝硬変についてだけ、この2つの確認を求めています。ほかの原因による肝硬変にはない条件です。断酒の期間は、受診の記録や検査の経過で確認できるようにしておきます。

等級は検査数値と生活の状態で決まる

2級の例示は、定められた検査成績・臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示し、かつ一般状態区分表のエ又はウに当たるものです。ウは身の回りのことはできるが、ときに少し介助が必要で日中の50%以上は起きて過ごせる状態、エはしばしば介助が必要で日中の50%以上を横になって過ごす状態です。

よくある質問

Q. 断酒できていないと、請求はできませんか?

A. 精神の障害については、断酒が請求の条件とは定められていません。ただし審査では療養の経過が考慮されます。アルコール性肝硬変は、180日以上飲酒していないことが認定の条件なので、通院と断酒の記録を残しておいてください。

Q. 薬物依存も同じ考え方ですか?

A. 同じです。認定基準は「アルコール、薬物等の精神作用物質」による精神障害を同じ項目で扱っており、急性中毒や身体依存の見られないものを対象外とする線引きも共通です。診断書には、使っていた物質と治療の経過を正確に書いてもらいます。

Q. 精神と肝臓の両方に障害がある場合は、どうなりますか?

A. それぞれの障害の程度を、精神と肝疾患の基準で別々に認定します。そのうえで、認定基準の重複障害の取扱いにより、あわせた等級が判断されます。診断書もそれぞれの様式で用意するため、早めに準備を始めてください。

Q. 会社員のときに初診日があると、何が違いますか?

A. 初診日に厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象になり、3級まで受け取れる可能性があります(厚生年金保険法第47条)。国民年金だけの場合の障害基礎年金は、1級と2級だけです(国民年金法第30条)。

まとめ:病名で諦めず、いまの状態と治療の経過を整理する

アルコール依存症は、明らかな身体依存があり生活が著しく制限されていれば、器質性精神障害の基準で対象になります。認知障害、うつ病などの併発、肝硬変があれば、それぞれの基準での請求も考えられます。どの道でも、治療を続けている経過が審査の大切な材料です。まずは通院の記録と、いま生活で困っていることを書き出すところから始めてください。

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参考資料

・国民年金法 第30条・第70条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条・第73条の2(e-Gov法令検索)
・障害認定基準 第8節 精神の障害(日本年金機構)
・障害認定基準 第13節 肝疾患による障害(日本年金機構)

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この記事を書いた人

請川 智章のアバター 請川 智章 社会保険労務士・障害年金専門

香川県観音寺市を拠点とする障害年金専門の社会保険労務士
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