監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に基づき作成しています。
この記事の結論
「働いている=不支給」ではなく、審査で見られるのは収入の多寡ではなく、職場でどのような援助や配慮を受けているかです。
等級判定ガイドラインでは、就労継続支援A型・B型、障害者雇用、就労移行支援による就労は、いずれも1級または2級の可能性を検討する対象と明記されています。
一般就労(特に障害を隠すクローズ就労)は最も厳しく見られるため、援助の内容と就労後の疲弊を具体的に伝えることが重要です。
障害年金を申請、あるいは更新する際、多くの方が直面するのが「働いていると年金がもらえないのではないか?」という不安です。特に精神障害や知的障害の場合、就労状況は「日常生活能力」を判断する重要な指標となるため、審査に与える影響は小さくありません。
ただ、ひとえに「働く」と言っても、一般企業でのフルタイム就労と、福祉的なサポートを受けながらの就労(A型・B型)では、審査における扱われ方が全く異なります。本記事では、それぞれの就労形態が審査にどう影響するのか、その違いと対策を解説します。
就労していると、障害年金の審査にどう影響しますか?
「1円でも稼いだら受給できない」というのは誤りで、審査で重要なのは収入の多寡ではなく、どのような援助を受けて働いているかという実態です。障害年金の認定基準は「労働能力の喪失」や「日常生活への支障」をベースにしているためです。

「働いている=不支給」ではないという大前提
精神の障害に係る等級判定ガイドラインには「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する」と明記されています。
審査官が注目する「就労の制限」と「援助の内容」
審査官は、単に「出勤しているか」だけでなく、短時間勤務、業務内容の軽減、頻繁な休憩、周囲からの指示出しなど、職場でどのような配慮を受けているかを確認します。これらの「援助」がなければ働けない状態であれば、労働能力があるとはみなされにくいのです。
一般就労(クローズ・オープン)は、審査にどう影響しますか?
障害を隠して健常者と同じ条件で働く「クローズ就労」は最も厳しく評価されやすく、障害者雇用枠での「オープン就労」は合理的配慮を受けている前提のもとで、2級・3級が認められる可能性があります。

| 就労形態 | 審査での扱われ方 |
|---|---|
| クローズ就労(障害を隠す) | 「著しい制限がない」と判断されるリスクが高い。2級以上は特に厳しい |
| オープン就労(障害者雇用枠) | 合理的配慮が前提のため、2級・3級の可能性を検討。勤続が長いと改善とみなされるリスクも |
| パート・アルバイト | 労働時間が短い理由が「体力の限界」であることを申立書で補足する必要がある |
クローズ就労でも「無理をして働いており、帰宅後は寝込んでしまう」といった深刻な実情がある場合は、その詳細を訴える必要があります。
障害者雇用枠で働いているのですが、それでも障害年金はもらえますか?
社労士はい、可能性はあります。障害者雇用は合理的配慮を受けていることが前提となるため、その配慮の内容を具体的に伝えられれば、2級や3級が認められることがあります。ただし勤続年数が長く安定している場合は「改善した」と見られることもあるので、配慮の内容を継続的に記録しておくと安心です。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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就労継続支援A型・B型は、審査にどう影響しますか?
等級判定ガイドラインでは、就労継続支援A型・B型(および障害者雇用・就労移行支援)による就労は、いずれも1級または2級の可能性を検討する対象と明記されています。福祉的就労であること自体が、援助を受けている根拠になります。
A型:「雇用」でありながら「福祉」である特殊性
A型は最低賃金が発生するため「一般就労に近い」と捉えられがちですが、実態はあくまで福祉施設での訓練です。主治医が「A型で元気に働いている」とだけ書いてしまうと誤解を与えるため、「福祉的就労の枠組みの中だからこそ維持できている」という文脈を伝えることが不可欠です。
B型:福祉的側面が最も強く、影響は極小
B型は雇用契約を結ばず、作業の対価として工賃を受け取る形態で、一般企業やA型での就労が困難な方が対象です。そのため、B型に通所している事実は、むしろ「自力で働くことが困難なことの裏付け」となり、「B型での活動=就労能力あり」と判定されることはまずありません。
審査を有利に進めるには、どう伝えればいいですか?
「働けている事実」ではなく「働けている理由」を、職場での配慮を具体的に数値化・可視化して伝えることが重要です。どの形態で働いているにせよ、この伝え方が審査結果を左右します。

職場での配慮を具体的に数値化・可視化する
「配慮を受けています」という抽象的な表現ではなく、「1時間に1回、15分の休憩をもらっている」「指示はすべてマニュアル化されている」など、第三者がイメージできる具体例を挙げてください。
就労後の「反動(疲弊)」を詳細に記録する
「仕事に行けている」ことの代償として、帰宅後に食事が摂れない、休日は一日中寝込んでいるといった「日常生活への支障」を診断書や申立書に反映させることが、受給の可能性を大きく左右します。医師には、職場で受けている配慮のリストを事前にメモで渡しておくのが効果的です。
よくある質問
Q. パート・アルバイトなど短時間勤務でも影響がありますか?
A. はい。労働時間の短さが障害による体力の限界であることを申立書等で伝えることで、実態が正しく評価されやすくなります。
Q. 就労移行支援を利用している場合も同じ扱いですか?
A. はい。等級判定ガイドラインでは、就労移行支援もA型・B型と同様に1級または2級の可能性を検討する対象とされています。
Q. 勤続年数が長いと不利になりますか?
A. 一概には言えませんが、長期間安定して勤務している場合、「症状が改善した」とみなされるリスクがあるため、職場での配慮の内容を継続的に記録しておくことが重要です。
Q. 診断書の就労状況の記載を、後から医師に修正してもらえますか?
A. 診断書作成後の修正は難しいため、依頼前に職場での配慮の内容をメモにまとめて医師に渡しておくことをおすすめします。
まとめ:自分に合った働き方と年金受給の両立を
障害年金は、障害を持ちながら社会とつながり、自立した生活を送るための大切な権利です。一般就労をしているからといって諦める必要はありませんし、A型・B型を利用しているからといって審査を軽視してもいけません。大切なのは、ご自身の就労状況が認定基準のどこに該当するのかを客観的に把握し、適切な書類を揃えることです。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等(日本年金機構)
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