監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・健康保険法・国の障害認定基準と等級判定ガイドラインに基づき作成しています。
この記事の結論
うつ病で休職中でも、初診日から1年6か月を経過していれば障害年金を申請できます(国民年金法第30条)。
審査では休職中であることも就労状況として考慮され、2級は日常生活の制限、3級は労働の制限がどの程度かで判断されます。
傷病手当金と同じ病気で障害厚生年金を受けると傷病手当金は調整されますが、障害基礎年金だけなら調整されません(健康保険法第108条)。
「うつ病で休職しているけれど、会社に籍がある状態で障害年金を申請してもいいのだろうか」「傷病手当金をもらっている間は無理なのでは」と迷う方は少なくありません。
この記事では、うつ病で休職中の方が障害年金を申請するときに、審査で何が見られるのか、傷病手当金との関係、復職への影響を、法律と国の等級判定ガイドラインをもとに整理します。
うつ病で休職中でも、障害年金は申請できますか?
申請できます。うつ病で休職中でも、初診日から1年6か月を経過していれば障害年金を請求できます。
申請できる時期は「休職した日」ではなく「初診日」から数える
障害年金を申請できるのは、初診日(うつ病の症状で初めて医師の診察を受けた日)から1年6か月を経過した日(障害認定日)からです(国民年金法第30条第1項)。休職を始めた日から数えるわけではないため、通院を始めてから休職までに時間がたっている方は、休職して間もなくても申請できることがあります。
在職中に初診があれば、障害厚生年金の対象になる
会社員として厚生年金に加入している間に初診日があれば、障害厚生年金の対象です。障害厚生年金には3級もあり(厚生年金保険法第47条)、この扱いは休職中に請求しても、退職してから請求しても変わりません。
休職中のうつ病は、障害年金の審査でどう見られますか?
休職していることは、就労状況のひとつとして審査で考慮されます。そのうえで、2級は日常生活の制限、3級は労働の制限がどの程度かで判断されます。休職中の方が抱きやすい不安と、実際の扱いは次のとおりです。

| よくある不安 | 実際の扱い |
|---|---|
| 会社に籍が残っている | 籍があることだけで不支給にはならない |
| 休職前は普通に働けていた | 発病後も雇用が続いている場合は、現在の仕事の内容や職場での援助を考慮する(等級判定ガイドライン) |
| 休職前に欠勤や遅刻が増えていた | 精神障害による出勤状況への影響として考慮される(同ガイドライン) |
| 傷病手当金をもらっている | 受給中でも障害年金は請求できる(同じ病気なら調整あり) |
等級判定ガイドラインは「出勤状況への影響」も見る
国の等級判定ガイドラインは、就労状況について「精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する」と定めています。休職に至るまでに欠勤が増えた、遅刻が続いたといった経過は、3級の「労働が制限を受ける」程度を判断する材料にもなるため、病歴・就労状況等申立書に時期を追って書いておきましょう。
休職中の家での過ごし方を、具体的に伝える
うつ病の2級の例示は「日常生活が著しい制限を受けるもの」とされています。休職中に、食事や入浴が自分ではできない日がある、家族の声かけがないと受診できないなど、家での様子を主治医に具体的に伝えることが、診断書に実態を反映させる近道です。
休職中なのに障害年金を申請したら、「本当は働けるのでは」と思われませんか?
社労士休職していることは就労状況として考慮されますが、それだけで不利になるわけではありません。大切なのは、休職中の生活でどんなことに困っているかを、診断書と申立書でそろえて伝えることです。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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うつ病で傷病手当金をもらっている間も、障害年金は申請できますか?
申請できます。ただし同じうつ病で障害厚生年金を受けると、傷病手当金は調整されます。健康保険法第108条第3項が調整の対象としているのは障害厚生年金で、障害基礎年金だけなら傷病手当金は調整されません。
さかのぼって決まると、重なった期間は返還になる
障害厚生年金が過去にさかのぼって決まると、傷病手当金と重なった期間の分は健康保険へ返還が必要になります(障害年金の額が少ない場合は差額が残ります)。厚生労働省の審議会資料によると、協会けんぽで令和元年度にこの調整で生じた過払いは、障害年金だけで5,001件・15.8億円ありました。
傷病手当金が終わる前から準備を始める
傷病手当金の支給期間は、支給を始めた日から通算して1年6か月です(健康保険法第99条第4項)。終わってから準備を始めると収入が途切れやすいため、受給中から初診日の確認や受診歴の整理を進めておくと安心です。
うつ病で障害年金を申請したら、復職できなくなりますか?
復職できなくなることはありません。障害年金の申請や受給が、復職を妨げる決まりはありません。障害年金は、回復して働けるようになるまでの生活を支える制度として使えます。

請求の書類に、会社が記入するものはない
障害年金の請求に必要なのは、診断書や病歴・就労状況等申立書などで、会社が証明する書類はありません。障害年金を請求すること自体を、会社に伝える義務もありません。
復職した後は、更新のときに状態が見直される
うつ病の障害年金は、多くの場合、数年ごとに診断書を出して更新します。復職して働けるようになった場合は、そのときの仕事の内容や職場での配慮も含めて、改めて等級が判断されます。復職の時期や働き方に迷うときは、主治医や専門家に相談しながら決めてください。
よくある質問
Q. うつ病で休職中の場合、何級に当たりますか?
A. 休職中であることは就労状況として考慮されますが、それだけで等級が決まるわけではありません。うつ病は、日常生活が著しい制限を受ける程度なら2級、労働が制限を受ける程度なら3級が目安です。3級は初診日に厚生年金加入だった方のみが対象です。
Q. うつ病で休職して、何か月たてば申請できますか?
A. 数えるのは休職してからの期間ではなく、初診日からの期間です。初診日から1年6か月を経過していれば、休職して間もなくても申請できます。初診から1年後に休職した方なら、休職から半年ほどで申請できる計算です。
Q. うつ病で障害年金を申請したことは、会社に知られますか?
A. 請求の手続きの中で、会社に書類を求めたり連絡したりする仕組みはありません。ただし、傷病手当金を受けている場合は、障害厚生年金との調整が健康保険の保険者(協会けんぽや健康保険組合)を通じて行われます。
Q. うつ病で休職したまま退職しても、障害厚生年金の対象ですか?
A. 対象です。障害厚生年金になるかどうかは、請求したときではなく初診日に厚生年金に加入していたかで決まります。在職中に初診日があれば、退職後に請求しても障害厚生年金として審査され、3級も対象になります。
まとめ:うつ病で休職中でも、障害年金は申請できる
うつ病で休職中でも、初診日から1年6か月を経過していれば障害年金を申請でき、審査では休職中であることも含めて、生活や仕事の制限の程度が見られます。まずは初診日がいつかを確かめ、傷病手当金が終わる前から準備を始めてみてください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・健康保険法 第99条・第108条(e-Gov法令検索)
・傷病手当金について(第135回社会保障審議会医療保険部会 資料4)(厚生労働省)
・国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン(日本年金機構)
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