障害年金を受け取るためには「初診日の要件」「保険料納付要件」「障害状態の要件」の3つをすべて満たす必要があります。
このページでは、それぞれの要件をやさしく解説し、押さえておくべきポイントをまとめています。
障害年金の3つの受給要件
1. 初診日の要件
初診日とは、障害の原因になった病気やケガで初めて医療機関を受診した日のことです。
障害年金では、この初診日がとても重要です。
なぜなら、初診日の時点で加入していた年金制度(国民年金 or 厚生年金)によって、もらえる年金の種類が変わるためです。
初診日で決まること
- 障害基礎年金になるのか、
- 障害厚生年金(1〜3級)になるのか
- 障害認定日の考え方
初診日の証明方法
- 受診状況等証明書(カルテのある病院)
- カルテがない場合は転院先の記録や紹介状など
- 複数の資料を組み合わせて推定するケースもあり
初診日が特定できないと申請が進まないため、最優先で確認すべきポイントです。
2. 保険料納付要件
障害年金を受給するためには、初診日の時点で一定の保険料納付状況を満たしている必要があります。
基本のルール(3分の2要件)
初診日のある月の前々月までの公的年金加入期間のうち、3分の2以上の期間で保険料が納付または免除されていることが必要です。
例:加入期間が120か月なら、そのうち80か月以上が納付または免除であれば要件を満たします。
直近1年ルール(特例)
初診日において65歳未満である場合、初診日のある月の前々月までの1年間に「保険料の未納がない」ことでも要件を満たすとされています。
※この特例は令和8年3月31日までの時限措置です。
ポイント
- 学生時代の未納が影響することがある
- 免除期間も「納付した期間」と同じ扱いになるため有利
- 未納があっても直近1年ルールで救済できるケースが多い
納付要件で判断が難しい場合は、年金記録の照会や免除歴の確認が必要になります。
3. 障害状態の要件
障害年金の受給が決まる際に重視されるのは「病名」ではなく、日常生活や仕事にどの程度の制限があるかという点です。
医師の診断書に、現在の障害の状態が正確に反映されているかどうかが最も大切なポイントになります。
認定の基本的な考え方
障害状態の認定では、以下のような点が総合的に評価されます。
身の回りのこと(食事・入浴・着替えなど)がどの程度できているか
- 外出の可否や社会参加の状況
- 就労や学業にどの程度支障があるか
- 周囲の援助や見守りがどの程度必要か
- 症状の持続性(良い日・悪い日の波も含めて判断)
精神の障害の場合のポイント
うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害などの場合、以下の点が重視されます。
- 意欲・集中力・判断力の低下
- 人との関係が保てない、トラブルが多い
- 外出困難、社会的不安
- 日常生活での援助の必要性
- 就労の継続が困難、長く続かない
- 金銭管理・生活管理の困難さ
身体の障害(肢体の障害)の場合のポイント
手足の可動域、筋力、歩行能力などが評価されます。
- 杖・歩行器の必要性
- 階段の昇降ができるか
- 日常生活の動作がどこまで自力で可能か
- 長距離歩行や立位保持が難しいか
- 家事や就労にどの程度制限があるか
内部疾患(心臓・腎臓・呼吸器・肝臓など)の場合のポイント
以下のような医学的数値や生活状況が重視されます。
- 検査値(eGFR、EF、%VC、FEV1など)
- 息切れ、倦怠感などの自覚症状
- 治療内容(透析、投薬、酸素療法など)
- 日常生活・就労への影響
- 身体活動の制限度合い
障害状態は「診断書の書かれ方」が命
障害年金は、診断書の記載がすべての基礎になります。
症状が重くても、診断書に軽く書かれていると不支給になることがあります。
そのため、
- 日常生活の困りごと
- 援助が必要な具体的場面
- 症状の波
- 実際の生活能力
を丁寧に整理し、医師に正確に伝えることがとても重要です。
3要件は「すべて」満たす必要があります
障害年金の受給では、
- 初診日が特定できない
- 納付要件が微妙
- 診断書の内容が軽く書かれている
など、どれか1つが欠けても不支給になる可能性があります。
逆に、3つの要件がしっかり揃えば、病名に関わらず受給できる可能性があります。