「数年前のあの病気は、今の障害と関係があるのだろうか?」
障害年金の申請において、最も頭を悩ませる概念の一つが「相当因果関係」です。
これを正しく理解していないと、思いもしない日が「初診日」と判定され、保険料の納付要件を満たせなくなったり、受給額が減ってしまったりするリスクがあります。
特に精神疾患や糖尿病などの合併症を抱える方にとって、この「病気のつながり」をどう整理するかは、受給の成否を分ける極めて重要なポイントです。
障害年金における「相当因果関係」とは何か?

相当因果関係とは、簡単に言うと「前の病気がなければ、後の病気は起こらなかった」と医学的・経験則的に認められる関係のことです。
障害年金の実務では、この因果関係が認められると、「前の病気で初めて医師の診察を受けた日」が全体の初診日として扱われます。
なぜ「病気のつながり」が重要なのか?
初診日が「前」にずれることで、以下の条件が大きく変わります。
納付要件: 当時、年金保険料を適切に払っていたか。
加入制度: 当時、厚生年金だったか国民年金だったか(受給額や3級の有無に直結)。
初診日の証明: 数十年前まで遡る場合、カルテの破棄などで証明が困難になるリスク。
因果関係が認められる(合算される)代表的なケース

実務上、前後の病気に「つながりがある」とみなされやすい代表例をまとめました。
1. 精神疾患の移行(神経症から精神病へ)
ご相談で非常に多いのが、「神経症(パニック障害、適応障害など)」から「精神病(うつ病、統合失調症など)」への移行です。
具体例:
治療開始初期は「パニック障害」や「強迫性障害」だったが、長引く体調不良やストレスから後に「うつ病」と診断された。
判断:
この場合、パニック障害とうつ病には相当因果関係があると認められ、パニック障害で初めて受診した日が初診日となります。
2. 発達障害と二次障害
具体例:
生まれ持った「ADHD」や「自閉スペクトラム症」があり、大人になってから社会生活の困難さから「うつ病」を発症した。
判断:
原則として因果関係があるとされ、発達障害の初診日が全体の初診日となります。
3. 内科疾患の合併症
具体例:
糖尿病 → 糖尿病性腎症(人工透析)、高血圧 → 脳出血・脳梗塞など。
実務上の判断:
これらは医学的に関連が深いとされ、原則として「最初の病気(高血圧など)」の診察日が初診日となります。
ここが落とし穴!:
ただし、高血圧が初診日になると、「昔すぎてカルテがない」「当時は年金に入っていなかった」といった理由で、逆に年金がもらえなくなるリスクもあります。
一定期間、症状が落ち着いておられた場合は、現在の発症を新たな初診日として検討できる可能性があります。
因果関係が認められない(別物とされる)ケース
一方で、たとえ本人が「関係がある」と感じていても、制度上は「別の病気」として扱われるケースもあります。
| 前の病気(A) | 後の病気(B) | 相当因果関係の判断 |
| 喘息(ぜんそく) | うつ病 | 原則なし (身体疾患から精神疾患への移行は認められにくい) |
| 不慮の事故 | 既存の持病 | なし (交通事故による怪我と持病は無関係とされる) |
| 過去のうつ病 | 数年後のうつ病 | なし(社会的治癒) (一定期間支障なく働けていた場合は「別物」扱い) |
初診日が「前」にずれることのメリット・デメリット
相当因果関係が認められ、初診日が過去に遡ることは、必ずしも「得」ばかりとは限りません。
メリット:
当時は会社員で厚生年金に入っていたなら、障害厚生年金(3級あり、加算あり)として申請できる。
今の病気の時点では未納があっても、昔の時点では納付要件を満たしている場合、救済される。
デメリット:
昔の病院のカルテが残っていない場合、初診日を証明できず「詰んで」しまう可能性がある。
昔の時点で未納が多いと、逆に受給資格を失ってしまう。
実務上のアドバイス:迷ったら専門家に相談を

相当因果関係の判断は、単なる医学的知識だけでなく、過去の「裁決例(過去の審査結果の蓄積)」に基づいた専門的な判断が必要です。
安易に「今の病名がついた日」を初診日として申請してしまうと、審査の途中で「前の病気との関連」を指摘され、不支給通知が届いてからでは手遅れになることもあります。
観音寺・丸亀など中四国エリアで、複数の病歴をお持ちの方は、申請前に一度ご自身の「病気の歴史」を整理してみることを強くお勧めします。
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