概要
- 55歳・男性・香川県
- 両感音難聴
- 両耳の高度感音難聴(110dB前後)、近距離でも会話困難、補聴器装着下でも音認識不能、聴覚刺激に関する過敏・恐怖感
- 家族との筆談、身振りによる意思疎通、外出困難、社会的孤立、就労困難
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は、約30年前に交通事故に遭い、その後遺症として難聴を患われました。
事故当初は右耳の聞こえにくさを感じながらも、仕事や日常生活に支障がなかったため耳鼻科には通院されませんでした。
しかし、年月を経て聴力は徐々に低下し、接客を伴う家業の継続が難しくなり、廃業を余儀なくされました。
ご家族の勧めもあり、ようやく耳鼻科を受診した際にはすでに高度の難聴が確認されていました。
その後も進行が止まらず、最終的には両耳ともほとんど聞こえない状態となり、「障害年金を申請できないか」とのご相談をいただきました。
治療と生活の状況
交通事故後のリハビリを経て、しばらくは家業に復帰されましたが、聴力の低下が進むにつれ接客業の継続が難しくなりました。家業を閉じたのちも再就職を試みましたが、聴覚障害と精神的不安の影響で長続きせず、
現在は自宅でほとんどの時間を過ごされています。
補聴器を使用しても十分な聞こえが得られず、会話や電話は困難で、外出時には家族が同行し、必要なコミュニケーションは筆談やスマートフォンの文字入力で行っています。日常生活の多くを家族の支援に頼りながら静養されています。
申請までの経緯
本件では、30年近く前の初診日を証明することが最大の課題でした。
事故当時の病院はすでにカルテを廃棄しており、通常の方法では初診日の特定ができませんでした。
当センターでは、事故当時の警察の事故証明書や生命保険会社の診断書、自動車保険の記録など、あらゆる資料を収集して初診日を裏付けるための根拠を整備。その結果、年金機構にも認められる形で初診日を特定することができました。
一方、診断書作成時に必要なABR(聴性脳幹反応)検査を巡っては、相談者様が病院や検査環境に強い不安を示されたため、一時は検査なしで申請しましたが、追加検査の指示を受けました。
近隣の医院ではABR設備がなかったため、大学病院を紹介し、代替の客観的検査(聴覚電気反応検査)を実施してようやく書類を整えることができました。
こうした経緯を丁寧にまとめ、検査拒否の背景や精神的事情も申立書に反映させた結果、両側感音難聴による障害基礎年金1級として認定されました。
結果
等級
障害基礎年金1級認定
受給額
年金額 約130万円(子の加算含む)
まとめ
今回のケースでは、30年近く前の初診日の特定という極めて困難な課題を、多方面の資料から丁寧に裏付けることで乗り越えることができました。
また、検査そのものに強い抵抗を感じていたご本人に寄り添いながら、負担の少ない形で必要な手続きを進めた結果、最終的に1級の認定に至りました。
障害年金の申請では、カルテ廃棄や検査困難など、形式的な壁に直面することも少なくありません。
それでも、生活の実態や過去の記録を一つひとつ積み重ねていくことで、十分に認定へつなげることが可能です。
「昔のことだから無理かもしれない」と諦めず、まずはご相談ください。
今回のように、長い年月を経た案件でもしっかりサポートいたします。
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