概要
- 28歳・男性・香川県
- 胸椎後縦靱帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症
- 下肢麻痺、歩行不能、足の感覚消失と強い痺れ、体感不安定、座位保持困難、全身動作の制限、強い背部痛、排泄動作困難
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は交通事故をきっかけに体調の異変を感じ、当初は軽いむち打ちとして治療を受けていました。
しかし、時間の経過とともに痛みやしびれが強くなり、やがて脚が動かなくなってしまいました。
複数の医療機関を受診しても原因が分からず、症状は悪化の一途をたどり、最終的に寝たきりの状態となりました。
ご家族が必死に病院を探し回り、ようやく専門医の診断によって「後縦靱帯骨化症」「黄色靭帯骨化症」という指定難病であることが判明しました。
この病気は原因がはっきりせず、発症のきっかけも不明とされていますが、本件では交通事故による衝撃が誘因となった可能性が高いと考えられました。
しかし、事故との因果関係を証明することは容易ではなく、申請にあたっては医学的資料だけでなく、事故後の生活状況や症状の進行経過を詳細に示す必要がありました。
ご本人とお母様からの丁寧な聞き取りをもとに、因果関係を立証するための文書を整え、当センターで申請をサポートしました。
治療と生活の状況
発症当初はリハビリや投薬治療を受けても改善せず、痛みと麻痺が進行していきました。
最終的には足を引きずるようにしか動けなくなり、ついには這って移動する生活となりました。
その後、難病であることが判明し、緊急手術と入院治療を受けましたが、すぐに動けるようになることはなく、長期にわたりリハビリを続けています。
現在も車いすと歩行器を併用しながらの生活で、室内の移動もわずか数メートルが限界です。
着替えや排泄はお母様の介助を必要とし、ズボンや靴下を自力で履くことができません。
ベッド上での姿勢も30分と保てず、痛みを避けるために体勢を変え続ける生活を余儀なくされています。
入浴も自宅では困難で、介助を受けながら体を拭く形で清潔を保っています。
日中はお母様が仕事に出かけており、自宅では一人きりになるため、転倒や発作の危険を考えて極力動かないようにしています。
トイレまでは歩行器を使用し、食事も作り置きのものを摂るなど、限られた範囲での生活を続けています。
申請までの経緯
今回の申請では、交通事故と靭帯骨化症の発症との因果関係をどのように示すかが最も大きな課題でした。
事故後から症状が進行していった経過を時系列でまとめ、事故直後の診療記録や本人・家族の申述書を添付。
さらに、医師にも「自己由来の疾患ではなく事故を契機とした発症の可能性」を診断書内に明記していただくよう依頼しました。
後縦靱帯骨化症や黄色靭帯骨化症は難病指定を受けており、進行が緩やかであっても一度発症すると回復が難しい疾患です。
こうした特性を踏まえ、生活動作の制限が著しい点を具体的に説明することで、1級認定に相当する重度の障害であることを丁寧に立証しました。
申請書類の作成にあたっては、診断書だけでなく、生活状況申立書・事故証明書・本人および家族の陳述書を整備し、因果関係と生活の実態を明確にしました。
結果として、提出後スムーズに審査が進み、障害厚生年金1級として認定されました。
結果
等級
障害厚生年金1級認定
受給額
年金額 約150万円
まとめ
本件は、交通事故が発症の契機と考えられる稀な靭帯骨化症のケースでした。
直接的な因果関係を証明することが難しい中で、事故後の経過や生活の実態を丹念に整理し、医師の理解と協力を得ながら申請を進めたことが認定につながりました。
後縦靱帯骨化症や黄色靭帯骨化症は、進行すると歩行が困難になり、やがて寝たきりとなることもある非常に重い疾患です。
発症の原因がはっきりしないため、「事故や外傷がきっかけかもしれない」と感じた段階で早期に専門医の受診と相談を行うことが大切です。
障害年金の制度は、こうした難病や外傷による長期的な生活の支援にも活用できます。
今回のように若い世代であっても、正確な診断と丁寧な書類準備によって適正な等級認定を受けることが可能です。

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