概要
- 60歳・男性・愛媛県
- 緑内障、黄斑円孔、極強度近視性網膜脈絡膜萎縮
- 著しい視力低下、視野欠損、視野狭窄、書字・読字困難、焦点調節困難、視認動作困難
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は、もともと子どものころから近視がありましたが、メガネをかければ問題なく日常生活を送れていました。
ところが、大学進学後に視野の一部が欠けるような違和感を覚え、検査の結果「網膜剥離」と診断され手術を受けられました。
手術後はいったん落ち着き、社会人として仕事を続けていましたが、就職後しばらくして再び視野の異常を感じ受診したところ「緑内障」と診断。以降は点眼や手術を含めた治療を続けてこられました。
しかし、その後も病状は少しずつ進行し、現在では視力がほとんど残っていません。
これまで長年治療を続けてきたものの、視覚障害が進む中で将来への不安が大きくなり、「自分も障害年金の対象になるのだろうか」との思いからご相談をいただきました。
治療と生活の状況
初めての手術後は安定した時期もありましたが、その後も両目で複数の手術を繰り返されました。
右目では網膜剥離の手術に続き、後年には黄斑円孔の発症により再び手術を受けました。手術後は視野の中心部分が見えなくなり、文字の読み書きや書類の確認など、細かな作業が極めて困難になりました。
左目についても白内障や緑内障の進行が重なり、最終的には視野欠損と著しい視力低下が残りました。
両目とも視野の大部分に欠損があり、見える範囲はごく限られたものになっています。
こうした状態のため運転はもちろん、日常生活のあらゆる場面で支障が生じています。
食事の準備や買い物、書類記入なども家族の手助けが必要で、仕事でもパソコン画面の確認やメモの記入ができなくなったため、長年勤めた職場を退職されました。
現在はご家族の支援を受けながら、自宅でできる範囲の生活を続けておられます。
申請までの経緯
今回の申請で最も大きな課題となったのは「初診日」の扱いでした。
40年近く前の大学時代に受けた網膜剥離手術を初診とすると、障害基礎年金の対象となってしまいます。
しかし、その後に発症した黄斑円孔や緑内障、網膜脈絡膜萎縮は、それぞれに経過や原因が異なっており、網膜剥離との直接的な因果関係は認められませんでした。
また、当時の医療記録を取り寄せるのも非常に困難で、カルテが残っていない病院もありました。
それでも、緑内障を診断した病院にわずかに残っていた記録から、網膜剥離術後は安定していたことが確認され、緑内障の診断を受けた時点を「初診日」として整理することができました。
このように、40年近く前の受診履歴をたどり、複数の医療機関とのやり取りを重ねながら、初診日の証明を行ったことが今回の申請の大きなポイントでした。
その過程では、当時の病歴を振り返るご本人への丁寧なヒアリングや、書類の補足説明も重要な役割を果たしました。
結果
等級
障害厚生年金1級認定
受給額
年金額 約160万円
まとめ
今回のケースは、非常に古い受診記録をもとに初診日を立証した、難しい案件でした。
視覚障害のように、長い年月をかけて徐々に進行する病気では、初診日の取り扱いが認定の大きな鍵となります。
適切な因果関係の整理と医療機関との調整を重ねることで、障害厚生年金1級の認定に至りました。
長い治療歴の中でも、諦めずに一つひとつの経過を確認し、粘り強く手続きを進めたことが成果につながった事例です。
視覚障害は、生活の質に大きな影響を与えるものですが、年金を受けることで経済的・心理的にも支えを得ることができます。
同じように長年視力の低下に悩まれている方にも、ぜひ早めの相談をおすすめしたい案件です。
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