概要
- 41歳・女性・香川県
- 統合失調症
- 幻覚・幻聴、不眠、強い抑うつ気分、過剰服薬、記憶の混乱、見当識障害、無気力、社会的交流困難
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は約15年前から不眠や幻聴、幻覚といった症状に悩まされていました。
最初は病気という自覚も薄く、「少し休めば良くなるだろう」と思っていたそうです。
しかし、次第に症状が悪化し、気づいたら外を裸足で歩いてしまうなど、自分ではコントロールできない行動が増えていきました。
受診をきっかけに統合失調症と診断され、服薬治療を続けるようになりましたが、薬の効果を感じにくく、効かないときには薬を多く飲んでしまうこともあったといいます。
その後も体調の波が大きく、転居などの影響もあり通院先が何度か変わる中で、症状はなかなか安定しませんでした。
「病気が長く続いているけれど、私も障害年金の対象になるのだろうか」
そんな疑問を持たれ、当センターへご相談いただきました。
治療と生活の状況
発症当初から不眠が続き、眠るために薬の量を増やしてしまう時期もありました。
服薬後は眠れても、朝になってもなかなか頭が働かず、日中もほとんど横になって過ごす日々。
ご結婚後は、家族との時間がかえって負担になってしまうこともあり、「寂しい」「消えてしまいたい」といった気持ちが強くなることもありました。
お子さんを出産後は育児への不安や自己否定感が強まり、赤ちゃんの泣き声を聞くとパニックになって泣き出してしまうこともありました。
家事や身の回りのことも思うようにできず、夫や母親の支えがなければ生活が成り立たない状態でした。
現在も睡眠障害や抑うつ気分が続いており、日中はほとんど自宅で過ごしています。
薬を飲み忘れると症状が悪化するため、家族が服薬管理を行いながら慎重に生活されています。
最近では、朝起きたときに「ここがどこなのか」「今日は何日なのか」が一瞬わからなくなるなど、記憶の混乱も見られています。
申請までの経緯
ご本人の症状は長期間にわたり、初診日も10年以上前にさかのぼる必要がありました。
しかも、過去に通っていた病院が閉院していたり、主治医が変わっていたりと、資料の確認には非常に多くの時間と労力を要しました。
当センターでは、まず病歴の流れを正確に整理し、どの時期にどの病院で治療を受けていたのかを丁寧に特定しました。
初診日の証明が不十分だと年金の請求が難しくなるため、各医療機関に照会を行い、ようやく診断書の取得に至りました。
当初は「認定日(発病から1年半時点)」での請求も検討しましたが、診断書が古く、内容も十分でなかったため、結果的には現症(現在の状態)のみでの認定となりました。
長い経過を一つひとつ整理し、医療機関とも粘り強く調整を重ねたことで、無事に申請を完了することができました。
結果
等級
障害基礎年金2級認定
受給額
年金額 約83万円
まとめ
この事例は、長期間にわたり統合失調症の治療を続けている方が、初診日の特定や書類の整理を丁寧に進めることで年金の受給につながったケース です。
統合失調症は症状の波が大きく、通院を続けていても「本当に自分も対象なのか」と不安に思う方が少なくありません。
また、病歴が長い場合、医療機関の記録が残っていないこともあり、申請を途中で諦めてしまうケースもあります。
しかし、専門家が過去の経緯をしっかり整理し、医師との連携を図ることで、適切な認定を受けられる可能性は十分にあります。
「昔の病院がなくなっている」「転居を繰り返している」「症状がよくなったり悪くなったりしている」
――そのような場合でも、まずは一度ご相談ください。
長い年月を経ても、丁寧に整理することで前に進めることがあります。
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