概要
- 47歳・男性・愛媛県
- 統合失調症
- 被害妄想、幻聴、思考混乱、感情のコントロールができない、病識の欠如
- 不眠、衝動行動、服薬拒否、食事拒否、就労困難
- 金銭管理不能(浪費、借金)、意欲低下、日常生活行動困難、社会的孤立
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は若い頃から周囲の人が自分を悪く言っているように感じるなどの被害妄想傾向がありましたが、それを病気とは考えず、治療を受けることはありませんでした。高校卒業後に複数の職場で働いたものの長続きせず、長期間の無職状態が続きました。
30代後半になって、同級生が経営する会社でアルバイトとして勤務を始めましたが、職場で周囲から悪口を言われているように感じるようになり孤立。次第に幻聴や強い不眠が出現し、社長が見かねて精神科を受診させたことが治療開始のきっかけとなりました。
しかし服薬に対する強い抵抗感から治療を継続することができず、症状の改善が見られないまま日常生活も乱れていきました。家族や交際相手の支援がなければ生活を維持できない状態となり、ケースワーカーからの勧めもあって、当センターに障害年金申請の相談をされました。
治療と生活の状況
初診時には不眠と被害妄想が強く、他人の悪口が聞こえる幻聴や、テレビが自分を中傷していると感じる被害感が続いていました。服薬を続けると「自分が自分でなくなるようだ」と感じてしまい、服薬を避けるようになり、症状は悪化。被害的な言動や暴言、浪費行為が頻発し、金銭的にも生活的にも自立が困難な状態でした。
交際相手や職場の社長が服薬や生活を支えていましたが、本人は被害妄想から食事を拒否するなど、他者の支援も受け入れられない場面が多く見られました。
一時的に入院治療を受けた後も「もう治った」と思い込み、再び服薬を止めてしまうことを繰り返しており、症状の安定には至りませんでした。退院後は実家で家族の支援を受けながら生活していましたが、働こうとしても集中力や記憶力の低下、被害的思考の再燃から職場になじめず、短期間での離職を繰り返しました。
現在も、金銭管理や食事、清掃などの日常生活の多くを家族に依存しており、本人一人で生活を維持することは困難な状況です。
申請までの経緯
統合失調症は、病識の乏しさから服薬を拒否したり治療を中断してしまうことが多く、症状が慢性化して生活に重大な支障をきたすケースが少なくありません。ご相談者様もまさにその典型であり、幻聴や被害妄想が続く中で、交際相手や家族が生活を支えている状態でした。
当センターでは、まずご本人とご家族から丁寧にヒアリングを行い、過去の受診歴、服薬状況、生活の実態を詳細に整理しました。特に、金銭管理の困難さ、服薬拒否の経緯、就労の失敗事例、家族の支援がどれほど不可欠であるかを具体的に書面化しました。
医師への診断書依頼に際しては、日常生活能力の著しい制限や服薬不遵守の背景を明確に伝えるための依頼文を添付。診断書が形式的な内容にとどまらず、実際の生活の困難さを的確に反映するよう配慮しました。これにより、本人の主観では伝わりにくい「生活上の支障」が客観的に示される形で申請書類を整えることができました。
結果
等級
障害基礎年金2級認定
受給額
年金額 約83万円
まとめ
統合失調症は、本人に病気の自覚が乏しいために服薬や受診を拒む傾向が強く、結果として症状が悪化・慢性化し、生活や就労が著しく制限されてしまう病気です。
今回の事例では、交際相手や家族の支援があってようやく生活が成り立っており、本人だけでの申請や生活維持は不可能な状況でした。
当センターが生活状況を客観的に整理し、医師への依頼文を通じて診断書に実態を反映させたことが、適正な等級認定につながりました。
障害年金の受給によって経済的な安定を得られたことは、ご本人の治療継続とご家族の支援体制の維持に大きく寄与し、今後の生活再建に向けた第一歩となりました。
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