概要
- 20歳・男性・香川県
- 知的障害、20歳前障害
- 理解力・判断力の不足、注意力・記憶力の弱さ、対人コミュニケーション困難、感情コントロール困難
- 社会的判断・危機管理の欠如、金銭・日常生活管理困難、就労の制約、自立生活困難
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は、生来性の知的障害を有する双子のご兄弟のうちのお一人です。
出生時より2,000グラム弱の未熟児として帝王切開で出産され、直後に自発呼吸ができず「善通寺こどもとおとなの医療センター」へ搬送されました。処置を受けたものの低酸素脳症を発症し、その後の発達にも影響が見られました。
1歳前には歩行が可能でしたが、発語は遅く、2歳頃にようやく単語を話し始めました。幼稚園では大きな問題は見られなかったものの、言葉や手先の動きに遅れがあり、成長の節目ごとに周囲との違いが見られました。
20歳の誕生日を迎えるにあたり、今後の生活の安定を考えたご両親が、障害基礎年金の申請を希望され当センターへ相談されました。
治療と生活の状況
小学校入学後は普通学級と特別支援学級を併用して在籍し、国語・算数などの学習面で著しい遅れがありました。文章の意味を理解したり、複数の指示を同時に把握することが難しく、周囲の動きを見て真似をすることで授業に参加していました。中学進学後、養護学校に通い始め、同級生との関わりの中で落ち着きを見せましたが、言語理解の困難さや複数の指示への対応の難しさは変わりませんでした。
卒業後は高齢者施設で清掃業務に従事しています。真面目に勤務しているものの、二つ以上の作業を並行して行うことができず、複数の指示を覚えられないため、職場の理解と配慮が不可欠な状況です。
日常生活では、掃除や片付けなどの家事全般を自発的に行うことができず、入浴時の洗髪や食後の片付けも母親の指示がなければ行いません。金銭感覚が乏しく、支払い・口座管理・公共料金の手続きなどはすべて母親が代行しており、日々の金銭も小出しで管理されています。時間の感覚も弱く、母親が声をかけなければ出勤時間に間に合わないこともあります。
また、初対面の相手との会話が苦手で、自分の考えをうまく言葉にできず、会話の流れを理解できないまま不適切な発言をしてしまうこともあります。注意を受けた際には理解が追いつかず不機嫌な態度を取ることがあり、感情のコントロールにも課題が見られます。危険認識も乏しく、通勤時の交通トラブルなども経験しています。
このように、日常生活・社会生活のいずれにおいても家族の支援が不可欠な状態が続いています。
申請までの経緯
20歳を迎えるにあたり、ご両親が今後の生活の安定を考え、障害基礎年金の申請を検討されました。
当センターでは、出生時から現在に至るまでの経緯を詳細にヒアリングし、医療記録や学校での支援経過を整理。低酸素脳症による知的障害が生来性であること、療育手帳を中学時に取得していることを確認しました。
診断書作成にあたっては、日常生活における自立の困難さ(時間・金銭・清潔保持・対人関係・社会行動など)を具体的に医師へ伝えるため、ご家族と協力して「日常生活状況申立書」を丁寧に作成しました。
特に母親の支援なしでは生活が成り立たない点を中心に、実際の生活場面を例示して医師に理解を促しました。
結果
等級
障害基礎年金2級認定
受給額
年金額 約83万円
まとめ
本件は、生来性の知的障害により、学習や社会適応、日常生活の全般において支援を必要としている事例です。
家庭や職場の支援により一定の社会参加が可能となっているものの、自立した生活は困難で、金銭管理・時間管理・感情制御など多方面で家族の介助が欠かせません。
申請にあたっては、医師や家族と連携し、幼少期からの発達経過を具体的に整理したことにより、適切な等級認定につながりました。
生来性知的障害の申請では、医療的治療経過よりも「生活上の支援の必要性」を丁寧に示すことが極めて重要であることを再確認させる事例でした。
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