概要
- 20歳・女性・愛媛県
- 知的障害、両大血管右室起始症、20歳前障害
- 精神発達遅滞、注意集中困難、学習障害、記憶保持困難、自己抑制困難、柔軟性の欠如
- 会話のキャッチボール困難、指示理解困難、聴覚過敏、集団行動困難、共感理解の不足、家庭依存傾向
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は、先天的な心疾患と知的障害をお持ちであり、出生時から医療機関での治療や特別な支援を受けながら成長されてきました。出生時には妊娠33週での早産、体重1,375gの極低出生体重児として生まれ、食道閉鎖および心疾患のため長期間の入院治療を受けられています。その後も身体的発達や知的発達の遅れがみられ、一般の保育園や学校では対応が難しかったため、発達支援施設や特別支援学級、支援学校に通学されてきました。
成長とともに体力や生活面の自立も少しずつ進みましたが、手先の不器用さや危機察知能力の弱さ、音への過敏さなどが続いており、一人での行動や社会生活には常に見守りが必要な状態です。高校卒業後はB型作業所に通所し、農作業などの軽作業を行いながら生活を続けておられますが、完全に自立して生活することは難しく、ご家族の支援が欠かせません。
こうした経緯を踏まえ、20歳の誕生日を迎えるにあたり、お母様が今後の生活の安定を見据えて「障害年金の申請をしたい」と当センターへご相談くださいました。
治療と生活の状況
出生直後から、心疾患および食道閉鎖により複数回の手術や輸血を受け、乳児期には胃瘻や十二指腸瘻による栄養管理が続きました。1歳半頃から歩行を開始し、2歳頃には言葉を発するようになりましたが、運動や言語の発達はいずれも遅れが見られました。幼少期は食事摂取や体力維持が難しく、度重なる入院を経験されています。
学齢期に入っても体力や知的面での遅れがあり、支援学級での学習を継続。読み書きは可能でしたが、書字のバランスを取ることや計算の習得には困難があり、学力はおおむね小学校低学年程度で止まっていました。対人関係では相手のペースに合わせることが苦手で、集団行動にも支援が必要でした。また、音への過敏さが強く、大きな音や高音に対して耳をふさぐ、逃げ出すといった行動がみられました。
中学・高校時代は特別支援学校に在籍し、社会生活に必要な動作や作業訓練を受けました。高校卒業後はB型作業所に通所し、決まった作業や経路であれば自力で通勤が可能となりましたが、環境の変化や予期せぬ出来事には対応が難しく、常に家族や周囲の見守りが必要な状態が続いています。聴覚過敏や不安傾向もあり、公共交通機関の利用や金銭管理など日常生活の多くの場面で支援が欠かせません。
申請までの経緯
知的障害や先天性疾患による障害年金の申請では、出生時からの経過を詳細にまとめた「病歴・就労状況等申立書」が必要となります。今回のケースでも、妊娠中の経過、NICUでの入院、手術歴、発達状況、学齢期の支援教育、そして現在の生活状況まで、20年近い長期の経過を正確に整理する必要がありました。
ご本人は小さい頃から体力や知的面での制限があり、過去の経緯を自身で説明することは困難であったため、当センターではお母様から丁寧にヒアリングを行いました。入院や手術の記録、発達の様子、学校や支援施設での生活、家庭での支援内容などを一つひとつ確認し、医師が診断書を作成する際に必要な情報を過不足なく伝えられるよう整理しました。
さらに、医師が診断書作成の際に配慮すべき内容を明確にするため「診断書依頼文」を添付し、診断書と申立書の内容が矛盾なく連携できるよう調整。こうして出生から現在までの経過を正確に反映した書類を整えることで、安心して申請を進めることができました。
結果
等級
障害基礎年金2級認定
受給額
年金額 約83万円
まとめ
先天性の障害に基づく障害年金の申請では、出生から現在までの経過を正確にまとめる必要があり、その作業はご家族にとって非常に大きな負担となります。今回のケースでは、長期にわたる医療・教育・生活支援の経過を丁寧に整理し、医師との連携を図ることでスムーズに申請を進めることができました。
ご本人の発達や生活の歩みを丁寧に記録として残し、正確に反映することが、審査において実情を理解してもらうための重要な鍵となります。「出生時からの経過をどう書けばよいかわからない」と悩まれているご家族にとっても、専門家のサポートを受けることで安心して申請に臨めることを示す事例となりました。
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