メール よくある質問

ブログ

受給事例:左上肢形成不全により障害基礎年金2級(37歳・女性)

概要

  • 37歳・女性・香川県
  • 左上肢形成不全、左上肢機能全廃、20歳前障害
  • 日常生活動作全般制限、労働制限

相談から申請までの経緯

相談

相談者様は先天的に左上肢形成不全の障害をお持ちでした。
幼少期には大学病院で定期的に経過観察を受けていましたが、3~4歳頃には状態が安定し、医師からも特段の治療を要しないと判断されたため通院は終了しました。
以降は特別な医療的支援を受けることなく成長され、学生生活も通常学級で過ごしてこられました。
成人後は一般就労も経験し、現在は障害者雇用を積極的に進める企業に勤務されています。
職場では障害に対する理解があり、同僚の中にも障害年金を受給している方がいたことから、制度の存在を知る機会がありました。
自分も該当するのではないかと感じ、制度の仕組みを確認するために当センターへご相談されました。

治療と生活の状況

出生直後より治療を開始し、幼少期には上肢の形成不全に対して手術を実施。
退院後も定期的な通院を続け、成長とともに経過観察を行いました。
その後、心臓の症状は安定し、学童期以降は通院を要することなく過ごされていました。
学生時代は学業や集団生活において特段の支障はなく、通常学級で卒業までを過ごされました。
高校卒業後に就職した際は、体力を必要とする業務で左腕の機能制限が大きな負担となり、勤務を継続することができませんでした。
その後、障害者雇用枠で再就職してからは、業務の理解がある職場環境に恵まれ、現在も就労を継続されています。
一方で、日常生活では片手しか使えないことによる困難が多く、生活全般に支障が生じています。
洗濯物を干すことはできても、畳む作業は難しく干したまま使用しており、掃除や片付けも十分には行えません。
洗顔は入浴時にシャワーで行う程度で、朝は軽く濡らす程度しかできません。
入浴時も片手で体や髪を洗うため非常に時間がかかり、手の届きにくい部分の洗浄は不十分になりがちです。
料理は片手で行える範囲に限られるため、包丁を使わず簡単に作れるものを中心としています。
買い物も一度に多くのものを持つことができず、少量ずつ購入するか、重いものは配達を利用しています。
このように、就労こそ継続できているものの、日常生活のあらゆる場面で片手による制約が生じ、健常な生活動作を行うには多大な労力と時間を要しています。

申請までの経緯

現在の診断書では「左上肢機能全廃」とされており、本来であれば20歳到達時点から障害基礎年金2級の受給対象となる状態でした。
しかし、当時は障害年金という制度自体が身近に知られておらず、本人もご家族も申請の機会を持たないまま成人を迎えられていました。
ご相談を受けた際には、まず医療機関の受診歴と初診日の特定を進めましたが、最終受診から30年以上が経過しており、当時のカルテはすでに廃棄されていました。
大学病院などの大規模医療機関でも長期保存は難しく、初診日の証明は極めて困難な状況でした。
そのため、家族や関係者からの聞き取りをもとに、幼少期から障害があったことを裏付ける資料を整え、客観的に状況を示す形で初診日の確認を行いました

また、20歳時点では受診していなかったため認定日診断書の作成ができず、認定日請求(遡及受給)は行えませんでした。
現在の症状を基に事後重症請求として申請し、あわせて生活状況や経過を本人だけでなくお母様にも協力いただきながら丁寧にまとめました。
医療機関の紹介についても、幼少期に治療を受けた大学病院への再受診を案内し、診断書作成までの流れをサポートしました

結果

等級

障害基礎年金2級認定

受給額

年金額 約83万円

まとめ

本件は、生来の障害でありながらも制度の存在を知らなかったために長年申請されなかった事例です。
症状そのものは20歳前から変わらず2級相当であり、制度を知っていれば早期に受給できたはずの内容でした。
また、発症や手術から数十年を経過したケースでは、初診日の証明や医療記録の確保が極めて難しくなることも改めて示されました。
それでも、家族の協力と丁寧な聞き取りを重ねることで、現在の障害状態を的確に示すことができ、適正な認定につながりました。
障害年金制度の周知不足が申請の遅れを生むことを改めて感じさせる事例です。

コメント

この記事へのコメントはありません。

ページ上部へ戻る