概要
- 67歳・女性・香川県
- 両感音難聴
- 両側聴力喪失、耳鳴り、人工内耳不安定、夜間歩行困難
- 会話理解困難、一人外出困難、易疲労性
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は、30年以上前に耳の手術を受けたものの、その後は長い間特に問題なく生活を送っておられました。ところが10年ほど前からめまいや聴力の低下が出現し、次第に両耳での聴覚障害が進行。治療や補聴器の使用を続けても改善が見られず、日常生活や仕事にも大きな支障をきたすようになりました。
すでに65歳を超えており、老齢年金を繰上げ受給していたことから「自分は障害年金の対象外ではないか」と悩んでおられましたが、老齢年金を受け始める前に障害の状態が固定していた可能性があると知り、「認定日請求による遡及受給ができるのではないか」と考えて当センターにご相談いただきました。また、障害年金は非課税所得であるため、老齢年金よりも手取りが増える可能性がある点にも着目され、今後の生活設計を見据えたうえでのご相談でした。
治療と生活の状況
ご相談者様は若い頃に耳の手術を受けた後、20年以上にわたり特に大きな不調なく過ごしていました。
しかし10年ほど前からめまいや耳鳴りが頻発するようになり、当初は左耳、次第に右耳にも聴力低下が及びました。日常の会話が難しく、補聴器を使用しても十分な効果が得られない状態が続きました。
さらにめまいや平衡感覚の乱れによって、夜間や方向転換時にふらつくことが多く、転倒の危険を感じるようになりました。外出には常に夫の付き添いが必要であり、一人での外出や仕事は困難な状態です。
ご自身で営んでいた美容業も、顧客との会話が成り立たず、めまいや疲労から途中で施術を中断せざるを得ないこともあり、徐々に営業を続けることができなくなっていきました。現在では、身の回りの家事や買い物も夫の支援なしには難しい生活が続いています。
申請までの経緯
障害年金の申請にあたっては、初診日の特定と医証の整備が最も重要ですが、今回のケースでは初診が10年以上前と古く、さらに30年前の手術歴もあるため、どの時点を初診日とするか、証明をどう行うかが大きな課題となりました。
当センターでは、詳細なヒアリングを通じて病歴を時系列で整理し、「耳の手術後は長期間問題がなく、めまいを契機に再受診した時期を初診日とするのが妥当」と判断しました。
そのうえで、年金事務所と協議しながら、初診を裏付ける有効な医療記録を確認・確保しました。
診断書の作成に際しては、両耳の聴力喪失だけでなく、めまいや平衡障害による生活上の支障を正確に反映してもらえるよう、主治医宛に依頼文を添付し、これまでの経過を明確に整理しました。
また、65歳以降の請求であっても「障害認定日が老齢年金受給前であれば認定日請求が可能」であることを明確にし、請求方針を確定。老齢年金からの切替えに関しても併せてサポートを行いました。
結果
等級
障害基礎年金2級認定
受給額 遡及額
年金額 約83万円
遡及受給 約430万円(過去5年分)
まとめ
今回のケースは、65歳を超えていても障害認定日が老齢年金受給開始前にある場合は障害年金を請求できるという、制度上の重要なポイントを示す事例です。
初診日が古く、医療記録の整理や年金制度の解釈が難しい場合でも、専門家のサポートによって適切に手続きを進めることが可能です。
また、障害年金は非課税であるため、老齢年金との調整により実質的な手取りが増えるケースもあります。
今回の認定により、老齢基礎年金を障害基礎年金へ切り替え、老齢厚生年金との併給が可能となったことで、繰上げ受給による減額が解消され、実質的な手取り額も大幅に増加しました。ご本人は「老齢年金を受けている自分でも対象になるとは思わなかった」と驚かれつつも、経済的な安定と安心を得られたことで、「ようやくこれからの生活を前向きに考えられる」と話されています。
年齢や制度の壁を理由に諦めてしまう方も多いですが、今回の事例のように「老齢年金受給者でも遡及請求が可能」な場合があります。正しい知識と専門的な支援を受けることで、安心して生活を支える年金を受給できる道が開けます。
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