概要
- 24歳・男性・愛媛県
- てんかん、高次脳機能障害
- てんかん発作(意識消失・全身痙攣)、外出困難、てんかん手術後の高次脳機能障害、記憶障害、注意集中困難
- 判断力・理解力の低下、自発的行動困難、対人関係・意思疎通困難、言語・行動の幼児化、家族支援依存
相談から申請までの経緯
相談
ご相談は、ご本人の将来を心配されたお母様から寄せられました。
ご本人は若い頃からてんかん発作を繰り返しており、発作の頻度は次第に増加。
薬の調整や複数の医療機関での治療にもかかわらず改善がみられず、外科手術に踏み切られました。
手術後はてんかん発作こそ減少したものの、高次脳機能障害の後遺障害が残り、日常生活の多くの場面で家族の支援が欠かせない状態となりました。
お母様は「このままでは社会的に自立することが難しい」と感じられ、将来的な生活基盤を確保するため、障害年金の申請について当センターへご相談くださいました。
治療と生活の状況
初発のてんかん発作以降、長年にわたり複数の医療機関で検査・投薬治療を受けてきました。
薬による治療では発作を抑えることができず、最終的には外科手術を実施。
右前頭葉の一部を切除する手術を受けました。
手術後は言葉が出にくく、食事も自力で取ることができない状態が続きました。
退院後も会話や行動に異常が見られ、他者に対して常に敬語で話す、許可がなければ行動できないなど、社会的判断力が著しく低下していました。
日常生活でも、家事・入浴・着替え・外出といった基本的な行動において、家族の声かけや指示がなければ何もできない状態でした。
医師からは時間の経過とともに改善が見られる可能性を指摘され、家庭内で簡単な作業訓練を続けていましたが、指示内容をすぐに忘れてしまう、メモを見ても行動につながらないなど、記憶と実行の両面で障害が残存。
高次脳機能障害と診断され、以後はリハビリと投薬による経過観察が続けられました。
社会復帰を目指して専門学校へ進学し、一人暮らしにも挑戦しましたが、家事・金銭管理・通学・課題提出などすべてに支障があり、最終的には中退となりました。
その後は就労を目指してアルバイトにも挑戦しましたが、業務内容を覚えられず短期間で退職。
医師や家族の勧めで障害者雇用枠での勤務に切り替え、現在は週5日勤務を継続していますが、日常生活全般において家族の支援が欠かせない状況が続いています。
申請までの経緯
今回の申請では、てんかんと高次脳機能障害の両側面から障害の程度を明確に立証する必要がありました。
当センターでは、長年にわたる通院歴を時系列で整理し、手術後に出現した行動・記憶・判断能力の障害が「てんかん手術の結果によるもの」であることを医学的に一貫して説明できるよう書類を整備しました。
また、主治医には診断書作成にあたって、家族からのヒアリング内容を詳細に伝え、
「自発的行動ができないこと」「社会的判断力の欠如」「家族の常時介助が必要であること」
を正確に反映してもらいました。
家族による日常生活記録や第三者の客観的証言も添付し、日常生活における支障の大きさを丁寧に立証したことで、診断書と申立書の整合性が高い書類を作成することができました。
結果
等級
障害基礎年金2級認定
受給額 遡及額
年金額 約83万円
遡及受給 約400万円(20歳以降約5年分)
まとめ
本件は、てんかんに起因する高次脳機能障害 によって日常生活・社会生活の両面で著しい制限を受けている事例です。
医学的には手術後の合併症として説明される状態ですが、実際の生活では指示がなければ行動できず、記憶・判断・実行の全てに障害が残るなど、重度の生活制限が続いています。
ご家族の丁寧な観察と記録、主治医との連携、そして障害年金制度への正確な理解によって、適正な評価を得ることができました。
「医療的には成功した手術でも、生活上は以前より困難が増える」──そうした現実に向き合いながら、家族と本人が努力を続けてきたことが実を結んだ事例です。
本件は、高次脳機能障害による障害年金請求の立証の難しさと、その克服のプロセスを示す好例 といえます。
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