概要
- 62歳・女性・愛媛県
- うつ病
- 抑うつ気分、無気力、希死念慮、集中力・判断力の低下、衝動的行動
- 食欲不振、体重減少、不安・緊張、対人回避、社会的孤立、服薬管理困難、浪費、就労困難
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は、10年以上前から続く不眠や食欲不振に悩まされていましたが、「自分が精神的な病気だとは認めたくない」という思いが強く、精神科や心療内科の受診を避けていました。
代わりに、近隣の内科で睡眠導入剤を処方してもらいながら生活していましたが、次第に症状は悪化。仕事や家事が続けられなくなり、日常生活の多くを家族に頼らざるを得ない状態に陥りました。
それでもなお精神科への抵抗感が強く、体調を崩しながら無理に働き続けていましたが、ついに心身ともに限界を迎え、心療内科を受診したところ「うつ病」と診断を受けました。
生活・就労の両面で困難が大きく、将来の生活への不安から障害年金の申請を検討され、当センターにご相談いただきました。
治療と生活の状況
初期には睡眠導入剤によって一時的な改善がみられることもありましたが、根本的な症状は変わらず、強い不眠や倦怠感、抑うつ状態が持続していました。
仕事に出られない日が増え、退職と再就職を繰り返す中で、家事や金銭管理、清潔保持も困難となり、家族のサポートなしには生活が成り立たなくなっていきました。
また、「動きたくない」「人に会いたくない」という思いが強く、外出や通院も負担となり、医師との会話すら億劫に感じるような時期もありました。
服薬は継続されていたものの、体調が少し良いと感じると自己判断で服薬を中断し、再び体調を崩すという悪循環を繰り返していました。
こうした状況から、家族の助けを借りて日常生活を維持しながら、治療と仕事の両立を模索していたものの、徐々に社会的な活動は制限されていきました。
申請までの経緯
精神疾患での障害年金申請では、「初診日」の特定が極めて重要です。多くの方は「精神科を受診した日」を初診日と考えがちですが、実際には「精神的な症状を訴えて初めて医療機関を受診した日」が初診日となります。
本件では、当初の受診先が内科であったため、この日を正しい初診日として申請を進める必要がありました。この判断を誤ると受給資格を失う可能性もあるため、当センターでは受診記録やカルテ内容を精査し、初診日の位置づけを明確化しました。
また、認定日時点においても受診していたのは内科のみであり、通常は精神科医が作成する「認定日時点の診断書」を、内科医に依頼する必要がありました。
内科医は精神疾患に関する診断書作成に難色を示しましたが、当センターでご本人やご家族からの詳細なヒアリングを行い、日常生活での困難や症状の経過を丁寧に文書化。
それをもとに医師へ依頼文を作成し、カルテ内容と照らし合わせて提出することで、最終的に診断書を作成していただくことができました。
これらの調整は専門的な知識を要し、ご本人だけで進めることは極めて困難であったといえます。
結果
等級
障害厚生年金2級認定
受給額 遡及額
年金額 約140万円
遡及受給 約600万円(過去5年分)
まとめ
精神疾患による障害年金申請では、初診日の誤解や診断書作成の難しさが最大の壁となることが少なくありません。
本件のように、最初の受診が内科であっても、そこで精神症状を訴えていた場合は「精神の初診」として扱われます。
また、精神科以外の医師に診断書を依頼しなければならない場合でも、適切な説明資料や依頼文を準備すれば、正確な診断書を作成してもらうことが可能です。
複雑な条件が重なるケースでも、専門家のサポートを受けることで、制度上のハードルを越え、受給につなげることができます。
「自分のケースは難しいのでは」と感じている方も、まずは一度ご相談いただくことで、新たな可能性が開けることがあります。
コメント