概要
- 45歳・女性・愛媛県
- 肺高血圧症、MCTD(混合性結合組織病)、シェーグレン症候群
- 全身疼痛、息切れ、呼吸困難、筋力低下
- 階段昇降困難、長時間立位困難、入浴制限、買い物困難
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は、長年にわたり全身の倦怠感、関節痛、皮疹、呼吸困難など複数の症状に悩まされていました。
当初は軽度の関節痛や疲労感と考え整形外科を受診していましたが、症状は次第に悪化し、歩行や家事が困難となっていきました。
その後、心不全を発症し救急搬送され、ICUでの治療を受けるほどの重篤な状態となりました。
退院後も体調は安定せず、入退院を繰り返しながら長期にわたる闘病生活を続けていました。
初診から15年ほどが経過した後に障害年金制度の存在を知りましたが、当時受診した医療機関のカルテが残っていない可能性が高く、自身での申請は困難と判断。
複数の膠原病や自己免疫疾患が関係しており、初診日の特定が難しいことから、当事務所に相談に来られました。
治療と生活の状況
ご相談者様は、MCTD(混合性結合組織病)、シェーグレン症候群、肺高血圧症などを併発し、長期間にわたり投薬治療と通院を継続してきました。
全身の痛みや倦怠感が強く、少し動くだけで息切れを起こす状態で、階段の昇降やしゃがむ動作も困難でした。
関節痛のため家事全般を一人で行うことが難しく、掃除・洗濯・炊事などは家族に支えられながら行っていました。
歩行も10分程度で股関節痛や息苦しさが出現し、買い物ではカートを支えにしながらこまめに休憩を取る必要がありました。
その後、大腿骨頭壊死が判明し、人工関節置換術を受けましたが、術後は脱臼防止のため動作に注意が必要で、しゃがむ、床から物を拾う、階段を使うといった動作ができなくなりました。
退院後はコープの宅配などを利用し、生活全般にわたって家族の支援を受けながら過ごしています。
現在も3か月に一度の通院を続けていますが、日常生活は大きく制限されており、外出もほとんどできない状態が続いています。
申請までの経緯
相談を受けてから、最初の課題は初診日の特定でした。
15年以上前の初診医療機関ではカルテがすでに廃棄されており、証明書の発行は容易ではありませんでした。
当事務所では、相談者様の記憶や過去の通院経路を丁寧に整理し、複数の医療機関に照会を行いました。
その結果、当時の受診日を確認できる資料を見つけ、病院に依頼して初診に関する証明を得ることができました。
その後は、障害認定日時点と現症時の2枚の診断書を取得し、当時の症状がいかに重篤であったか(ICUでの治療、心不全、肺高血圧症の併発など)を明確にしました。
加えて、日常生活上の困難(家事動作、歩行、外出、体力の低下など)を詳細にヒアリングし、病歴就労状況等申立書に反映しました。
特に、認定日から現在に至るまでの長い経過を時系列で正確に整理したことが、審査で高く評価されました。
結果
等級
障害認定日時点 障害基礎年金2級
受給額 遡及額
遡及受給 約700万円(過去5年分)
提出した診断書および申立書の内容が認められ、障害認定日当時の状態が障害基礎年金2級に該当すると判断されました。
認定日請求が成立し、過去5年分の遡及支給を含めて約700万円の受給が決定しました。
現症では2級相当の評価は得られませんでしたが、認定日当時の症状をもとに支給が認められた非常に稀なケースです。
まとめ
本件は、初診から15年以上が経過していたにもかかわらず、初診日の証明と病状経過の整理によって認定日請求が成功した事例です。
ペースメーカーや透析と異なり、MCTDや膠原病のような進行性疾患では、症状が時期によって変動するため、診断書だけでは実態を十分に伝えられないことがあります。
本件では、医療機関への丁寧な照会と、本人・家族への詳細なヒアリングを通じて、「生活実態としての困難」を正確に反映したことが支給決定の決め手となりました。
認定日請求が成立するケースはごく少数ですが、正確な初診日の特定と、経過全体を見通した文書整理によって、実現可能であることを示した好例といえます。
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