概要
- 48歳・男性・香川県
- 肥大型心筋症
- 遺伝性疾患、頻脈、不整脈、心肺機能低下、易疲労感
相談から申請までの経緯
相談
ご相談者様は、以前から頻脈などの自覚症状があり、母親も肥大型心筋症と診断されていたことから、遺伝性の可能性を考え自主的に検査を受けました。
初診時には肥大型心筋症の傾向はあるものの、特に治療の必要はないとされ、その後は長期間にわたり通院していませんでした。
しかし、数年前に実兄が急性心臓死で亡くなったことをきっかけに再び精密検査を受けたところ、ご本人の病状が家族の中でも最も進行していることが判明し、早期の手術を勧められました。
その結果、ペースメーカー埋込術を受けることとなりました。
ペースメーカーを装着した場合は障害年金の対象となることを知り、申請を検討されましたが、初診が15年以上前の自主的受診であったためカルテが既に破棄されており、どのように扱うべきか判断できず、当事務所にご相談くださいました。
治療と生活の状況
ご相談者様は、初診以降しばらくは特段の自覚症状もなく、仕事や日常生活に支障はありませんでした。
ただし、不整脈の発作で数回救急搬送されたことがあり、H24年にはカテーテルアブレーション手術を受け、その後は発作が落ち着いていました。
R3年に兄が急逝したことを契機に実施された家族検査で病状の進行が明らかとなり、R3年12月にペースメーカー埋込術を施行しました。
現在は重労働が禁止されており、仕事を離れて治療に専念しています。日常生活においても、身の回りのことはおおむね自分で行えていますが、疲れやすさがあり、妻の協力を得ながら無理のない生活を送っています。
申請までの経緯
障害年金の申請にあたり、最も大きな課題となったのは初診日の特定でした。
初診から15年以上が経過しており、初診病院のカルテはすでに廃棄されていました。
当事務所では、まず現在通院している医療機関と初診病院が同一であることを確認し、病院側に当時の受診記録の有無を再度照会しました。
その結果、詳細なカルテは残っていなかったものの、受診日と肥大型心筋症に関連する精査を行った旨の記録が確認されました。
この情報をもとに、診断書に初診日および疾患との関連性を明記していただくことができ、障害認定に必要な要件を満たすことができました。
また、ペースメーカー埋込術の実施を確認し、該当要件を明確に示す形で申請書類を整備しました。
結果
等級
障害厚生年金3級認定
受給額
年金額 約60万円
まとめ
本件では、初診日が15年以上前でカルテが破棄されていたにもかかわらず、医療機関への丁寧な照会と記録の確認により、初診日の証明を補完できたことが最大のポイントでした。
ペースメーカー埋込術を施行している場合、原則として障害年金の対象になりますが、その前提として「初診日の特定」が欠かせません。
長期間経過しているケースでも、受診歴の整理や医療機関との連携によって必要な情報を整えれば、受給につなげることが可能です。
本件は、医学的には典型的な認定事例でありながら、初診証明の確保と医療連携の重要性を示す好例といえます。
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